(VOVWORLD) - 既にお伝えしましたように、イギリス議会は15日、テリーザ・メイ政権がEU=欧州連合との間で合意に至ったイギリスのEU離脱協定案を圧倒的多数で否決しました。これは驚くことではありませんが、イギリスのEU離脱プロセスの新しい障壁となっています。
これを受け、最大野党・労働党はメイ政権に対する不信任投票を要請しました。同政権は崩壊の危機に直面しているとの悲観的な声も上がっています。
英政府の歴史的な失敗
イギリス下院は賛成202、反対432で同協定案を否決しました。野党の反対に加え、与党・保守党のおよそ4割にあたる118人が造反しました。メイ氏はイギリスの歴代首相が経験した中でも最大級の敗北を喫しました。
イギリスの新聞「ザ・タイムズ」によりますと、230票差はイギリス議会の歴史で、政府が敗れた最大の数字ということです。この採決結果により、イギリスは先行きが不透明な状況に陥ることとなると評されています。
EUの反応
EUは、イギリスの離脱合意案の議会否決後も「再交渉せず」との立場が変えず、まずは、今後のイギリス側の方針を見極める姿勢で一致しています。一方、このまま、3月末に無秩序に離脱する事態への懸念はイギリス・EU双方で高まっており、交渉期間が延長されるという観測も強まっています。
EUのバルニエ首席交渉官は合意案否決を受け、BBC放送の取材に対し、「今はイギリスが次のステップを示す時だ。われわれは結束し続ける」と強調しました。
ドイツや、フランス、オーストリアなど各国からも、「どんな場合でも合意案の再交渉はあり得ない」と従来の主張を繰り返す発言が相次いでいます。ユンケル欧州委員長は声明で、「できるだけ早く考えを明確にするようイギリスに求める」と迫りました。予想を超える大差での否決を受け、譲歩のしようもないという現実もうかがえます。
今後の動向
否決を受け、メイ首相は与野党と協議した上で、21日までに代替案を明らかにする意向を示しました。ただ、議会の過半数が支持する案を示せるかは見通せず、3月29日に予定する離脱の先行きは不透明感が強まっています。
EUとの取り決めがない「合意なき離脱」に向かう懸念も残っています。加えて、以上お話ししましたように、労働党のジェレミー・コービン党首は採決の直後、メイ政権に対する不信任動議を提出しました。
3月29日の離脱予定日まで2か月余りとなったにもかかわらず、イギリスは依然として自らの進路を決められずにいます。メイ首相は今後、議会での再採決を目指す退陣を強いられるEU離脱を延期する、あるいは、離脱そのものを断念するという選択肢からの決断を迫られることとなります。