米中の緊張な貿易関係

(VOVWORLD) -先週、各国のメディアは、アメリカのトランプ大統領が中国製品に制裁措置を発動する大統領令に署名したことを一斉に報道しました。 


これによりますと、中国の鉄鋼とアルミニウムに高関税を課す輸入制限を発動しました。知的財産権の侵害を理由に、中国製品への大規模な制裁措置も表明しました。中国は早速、対抗姿勢を示しています。「貿易戦争は望まないが、決して恐れない」として米国産農作物などの関税引き上げ品目のリストを公表しました。しかし、強気の応酬は問題の根本的な解決になりませんでした。長引けば世界の株価や為替の神経質な動きも続き、実体経済に悪影響を及ぼしかねません。

習近平国家主席との関係を重視するトランプ氏でしたが、通商分野では今年に入って対中けん制を強めていました。秋の中間選挙を控え、貿易赤字の約半分を占める対中赤字が減らないことへのいらだちがあるのでしょう。1月には中国企業が強みをもつ太陽電池製品の緊急輸入制限(セーフガード)発動を決定しました。今月1日に鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課す今回の措置を決めました。中国などからの鉄鋼の大量流入が米国の軍需産業、安全保障を脅かしているというのが理由でした。

しかし、高関税でトランプ氏が言うように米国の製造業が保護され、再生するとは限りません。むしろ鉄鋼の調達コストが上昇して幅広い業界に打撃を与えかねず、アメリカ内でも懐疑的な声が上がっています。何より疑問なのは、WTO=世界貿易機関の規定違反の可能性があると知りつつ、一方的な制裁措置を、国内法を根拠に繰り出すトランプ氏の姿勢です。中国による知的財産権の侵害については、日本や欧州も問題視してきた経緯があります。

中国への進出企業が合弁会社の設立を通じて技術移転を強いられるといった不満は、日米欧に共通します。今回、トランプ氏は知財侵害のWTOへの提訴にも言及しましたが、かねてWTOに批判的なだけに本気度、優先度は測りがたいです。日欧はアメリカに対し利害の一致点を示しつつ、多国間の話し合いによる紛争解決を説き続ける必要があります。

鉄鋼・アルミの輸入制限については韓国やEU=欧州連合などが適用対象から当面外れた一方、日本は残りました。いずれにしても米国は個別の交渉で、自国の利益になるよう各国に譲歩を迫るとみられます。こうした手法で同盟国を分断するよりも、連携して中国と交渉する方が得策でしょう。


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