朝鮮民主主義人民共和国、対日関係に配慮か=拘束邦人「追放」の意図

【時事】朝鮮民主主義人民共和国当局は、拘束していた日本人男性の追放を決めました。

朝鮮民主主義人民共和国はこれまで、「国家転覆の陰謀行為」や「敵対行為」などを理由にアメリカ人らを長期間拘束し、対米交渉の「人質」に利用しました。今回の意図は明らかではありませんが、早期の「追放」処分とし、対日関係に一定の配慮を示したとの見方や、対外イメージの悪化に神経をとがらせている可能性もあります。

朝鮮中央通信は26日夜、観光目的で入国した日本人男性スギモト・トモユキ氏について、「法に違反する罪を犯した」として拘束し、「人道主義の原則により、寛大に許し、国外に追放することにした」と報じました。スギモト氏の名前を「杉本倫孝」氏と伝えていますが、違反行為など詳細には触れていません。
朝鮮民主主義人民共和国は2016年、観光目的で訪朝したアメリカ人大学生オットー・ワームビア氏が、首都平壌のホテルで政治的スローガンが記された物を盗んだとして拘束しました。国家転覆陰謀罪で労働教化刑(懲役刑に相当)15年の判決を言い渡しました。ワームビア氏はその後、約1年半拘束された後、昏睡(こんすい)状態で解放され、帰国直後に死亡しました。
朝鮮民主主義人民共和国はワームビア氏のほか、アメリカ人3人を拘束下に置き、アメリカ政権と解放交渉に臨みました。金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ大統領との史上初の米朝首脳会談の前には、信頼醸成のために3人を解放。交渉カードの一つとして利用しました。
ただ、朝鮮民主主義人民共和国は今回、スギモト氏を対米交渉に使ったようなカードにしなかったとみられ、日本政府に前向きなメッセージを送る思惑があった可能性もあります。
朝鮮民主主義人民共和国は9月9日の建国70周年を機に、外国人観光客の誘致に力を注いでいます。長期間の拘束を避け、早期幕引きを図る形で対外的なイメージ悪化を避けたとの見方も浮上しています。

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