エデ族の集落を訪ねて ~母系社会に息づく伝統と観光の調和~

(VOVWORLD) - ダクラク省のエデ族が取り組むコミュニティツーリズム。そこには、自分たちのアイデンティティや誇り、そして生き方そのものを携えて、世界の人々とつながろうとする姿勢があります。

ベトナム中部高原のダクラク省。ここに暮らすエデ族の集落で、新しい形の観光が注目を集めています。人口約33万人を擁するエデ族は、母系制を守り続ける少数民族として知られています。女性が家長となり、末娘が家を継ぐという独特の風習。長大な高床式住居での暮らし。そして、自然を崇拝し、銅鑼の音色と共に口承文化を紡いできた人々です。

いま、この集落で展開されているのは、単なる観光地巡りではありません。訪れた人々が地元の人々と共に生活し、共に働き、暮らしのリズムそのものを体験する「コミュニティツーリズム」です。

エデ族の集落を訪ねて ~母系社会に息づく伝統と観光の調和~ - ảnh 1農耕用トラクターでの畑仕事は、外国人観光客に人気の体験。

フランス人観光客が体験した「本物の暮らし」

(現場の音:農業用トラクターの音)

乾季を迎えた高原地帯。穏やかな日差しの下、鉄分を多く含んだ赤い土の道を農業用トラクターが揺れながら進んでいきます。集落から畑へと向かう道のりで、車輪が水たまりに乗り上げるたびに、フランス人観光客たちの陽気な笑い声が響きます。

「素晴らしい体験でした。この地の文化、料理、そして何より日常生活そのものを肌で感じることができました」

そう語るのは、フランスから訪れたメルクレ・オリヴィエさんです。地元の人々と一緒に畑に行き、彼らの働き方や日々の営みを目の当たりにする。それは、ベトナムへの旅で最も心に残った体験だったといいます。

同じくフランスから訪れたメルクレ・クレールさんは、エデ族の社会における女性の役割に強い関心を示しました。

エデ族の集落を訪ねて ~母系社会に息づく伝統と観光の調和~ - ảnh 2子どもをおぶって働くエデ族の女性。
その姿は観光客の感動を呼ぶ。

「エデ文化では女性が本当に重要な位置を占めています。これは非常に珍しいことです。多くの文化では見られない、女性にとって素晴らしい地位だと感じました」

クレールさんの言葉は、エデ族の母系社会の特徴を捉えています。この社会では、子供は母方の姓を名乗り、女性が財産を相続します。結婚は妻入婚で、妻が家長として土地や家を管理するのです。

「ありのまま」が最高のおもてなし

エデ族のガイド、イ・ティエン・ニエ・クダムさんは、この仕事を単なる観光案内とは考えていません。

「外国人の方々が集落を訪れると、村人はとても誇らしげに、心からのもてなしでお迎えします。そして回を重ねるごとに、みんな日常の暮らしに自信を持つようになっていくんです」

クロン・アナ村ブオン・チュア集落のホドー・エヌオルさんは、古い高床式住宅で外国人観光客を受け入れています。最初は戸惑いもあったといいますが、今ではコツをつかんだようです。

エデ族の集落を訪ねて ~母系社会に息づく伝統と観光の調和~ - ảnh 3高床式家屋など、エデ族の伝統文化が温かい体験として受け継がれる。

  「最初は外国からのお客様をお迎えするのは難しいと思っていました。でも、何度か経験するうちに気づいたんです。ありのままに生活し、ありのままの姿を見ていただくのが、一番喜ばれるんだと分かりました。そうするうちに、自然とお客様とも話せるようになりました」

コミュニティ全体で取り組む観光

エデ族の高床式住居は「ロングハウス」と呼ばれ、数世代が共に暮らします。家族が増えるごとに家を前方に増築していくため、非常に長い家になるのが特徴です。この独特な住居空間そのものが、貴重な文化体験となっています。

ホア・フー村のブオン・トゥオル集落では、ホベリー・エバンさん夫妻が伝統的な高床式住宅を建て、生活の場であると同時にホームステイとして活用しています。

「コミュニティツーリズムというのは、集落全体が協力し、成果を分かち合うものです。ただ、最も大切なのは、各家庭、各集落が伝統的な文化をしっかりと守ること。なぜなら、観光客の方々は単に食事や宿泊のためだけでなく、私たちの文化を体験し、集落に伝わる物語を聞くために来てくださるのですから」

持続可能な発展を目指して

エデ族は自然信仰、アニミズムを大切にしており、山、川、森林に神が宿ると信じています。また、「ダム・サン」と呼ばれる勇壮な叙事詩や、銅鑼を使った伝統音楽など、豊かな口承文化を受け継いできました。濃紺の布地に赤、白、黄色の細いストライプの縁飾りが施された伝統衣装も、この地域の文化を象徴するものです。

母系社会という独特の社会システム、自然と調和した暮らし、世代を超えて受け継がれてきた文化。そのすべてが、エデ族の集落を世界とつなぐかけがえのない財産となっています。

エデ族の集落を訪ねて ~母系社会に息づく伝統と観光の調和~ - ảnh 4コミュニティツーリズムはエデ族の
文化を守るための手段。

ダクラク省文化・スポーツ・観光局のチャン・ホン・ティエン局長は、こうした取り組みへの支援を約束しています。

「私たちは文化遺産としての価値を持つ空間を活用し、国の投資や国家目標プログラムと連携しながら、少数民族の皆さんが文化的価値を発展させ、保存し、それをコミュニティツーリズムの発展につなげていけるよう支援していきます」

ダクラク省のエデ族が取り組むコミュニティツーリズム。そこには、自分たちのアイデンティティや誇り、そして生き方そのものを携えて、世界の人々とつながろうとする姿勢があります。

派手な演出も、作られた体験もありません。ただ、ありのままの暮らし。それこそが、最も価値ある体験として、訪れる人々の心に深く刻まれているのです。

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