(VOVWORLD) - ベトナム北部、タイグエン省の雄大な山々に囲まれた村々で、今も伝統の民謡「テン」が歌い継がれています。
民謡「テン」と琴「ティン」は地元の特色ある文化である。 |
(民謡『テン』の披露)
「テン」とは、少数民族テイ族の言葉で「天」を意味します。天と地の「天」です。この民謡は、神様に豊作や幸福を祈るもので、地上から天にいる神様へ願いを届けるまでの道のりを物語っています。安定した天候を祈るほか、長寿や男女の愛、幸せを願う内容も歌われます。
テンを歌う際には、「ティン」という弦楽器が欠かせません。ティンは3本の弦を持ち、右手の人差し指で弦を弾いて演奏します。テイ族の伝説によりますと、大昔、ティンには12本の弦がありました。その琴の音色は人間だけでなく、万物の心を奪ってしまったそうです。そのため、天の神様がティンの弦を12本から3本に減らしたと言い伝えられています。
タイグエン省のテイ族やヌン族にとって、テンは単なる音楽ではありません。記憶であり、魂であり、過去と現在を結ぶ絆なのです。2019年、テンの実践がユネスコの人類の無形文化遺産に登録されたことで、その誇りは一層高まり、保存と継承の取り組みが深まりました。
チョドン村は、テン保存活動のモデルとして注目されています。村では、民謡「テン」と琴「ティン」のクラブが約8つあり、多くの住民が参加しています。中でも「故郷のティンの音色(ねいろ)クラブ」には、様々な年齢層の約30人が集まっています。
クラブ代表のヴー・ティ・ルオンさんは、次のように話しました。
(テープ)
「観光客をもてなすための特色ある民俗芸能プログラムを作り上げました。私たち民族の伝統的な民謡を広め、より多くの人々に知ってもらい、共に守っていきたいのです」
子どももティンの練習に集中 |
(子供たちがテンを歌っている)
しかし、テンが生き生きと受け継がれているのは、クラブ活動のおかげばかりではありません。子どもたちへの授業こそが、テンを真に次世代へ継承する場となっています。
チョドン村のヴァン・ティエン・コイ先生の教室では、子どもたちが熱心に一つ一つの音符、一つ一つの歌詞を学んでいます。短期間のうちに、多くの子どもたちが古典的なテンや新しい歌詞のテンを覚えています。
(男子生徒)「先生が一つ一つの音符を教えてくれるこの授業が一番好きです。自分の民族の文化を守りたいです」
(女子生徒)「最初は難しいと思いましたが、だんだん簡単にできるようになりました。将来は、民族の文化を維持するために、次の世代に伝えていきたいです」
タンクオン村では、テンは生活の息吹のように存在しています。わずか5、6歳の子どもたちが琴ティンを抱え、澄んだ音色を奏でています。
レ・ティ・ハンさん |
タンクオン村の住民、レ・ティ・ハンさんは次のように話しました。
(テープ)
「子どもたちは小さい頃から、観光客を迎える時や家族の集まりで、両親が歌うのを聞いて育ちました。大きくなると、おばあさんやお母さんから教えてもらうのです」
数百年の歴史を持つ高床式住居が森の木陰に佇む空間で、子どもたちは高齢の伝承者の周りに集まり、琴ティンを弾く指の動きを真剣に見つめています。こうして世代から世代へと受け継がれ、一つ一つの音符、一つ一つの歌詞が、村人一人ひとりの美しい記憶となっています。
タンクオン村のマ・ティ・ダンさんは次のように語りました。
(テープ)
子どもにティンの演奏を教えている
マ・ティ・ダンさん(右)
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「村には30人から40人ほどの子どもがいて、みんな琴ティンと民謡テンができます。私は先代から教えを受けたので、今度は子どもたちに伝えています。暇な時や夜に、子どもや孫たちを集めて教えています」
タンクオン村では、テンの芸術を観光と結びつけています。ここを訪れる観光客は、穏やかな景色を眺めるだけでなく、古い高床式住居の空間に響くテンの調べを聴くことができます。
ハノイからの観光客、ダオ・ティ・ランさんは次のように語りました。
(テープ)
「民謡テンと琴ティンをぜひ聴きたいと思っていました。これがこの土地の最も特色ある文化だからです。村の人たちの演奏を見て、歌の調べがとても滑らかで、ここの穏やかな景色と調和していると感じました」
文化を愛する心、コミュニティの結束、そして世代から世代へと受け継がれる民族の誇りのおかげで、民謡テンの調べと琴ティンの音色は現代の生活と共に生き続けています。ベトナム北部の大自然の中でティンの音色が響き続け、テンを子どもたちが覚えて熱心に歌い続ける限り、この遺産は、タイグエン省のテイ族やヌン族の魂の一部として、永遠に守られ、広がり続けることでしょう。