サイゴン中央郵便局の代筆職人

(VOVWORLD) -ホーチミン市のサイゴン中央郵便局には、さっぱりした身なりで控えめな趣のある年配の男性の姿がいつもあります。
サイゴン中央郵便局の代筆職人    - ảnh 1

1930年生まれのズオン・バン・ゴーさんです。ゴーさんは、ベトナムで最も長い間、代筆業をしている人物として、ベトナム版のギネスブックに認定されています。27年に渡って、サイゴン中央郵便局で、「案内兼代筆屋」という看板を掲げて働いているのです。

ゴーさんの周りには、いつも英語やフランス語の手紙を代筆してもらうため、順番を待っている人がいます。そのうちの1人の話です。

(テープ)

「私は13歳、14歳ぐらいの時から、外国宛の手紙を書いてもらっています。今は私ももう50歳です。ゴーさんが代筆の仕事をしているのは、ずっと前からです。もちろん昔は、今のような姿ではなく、とてもハンサムでしたよ。」

現在、ホーチミン市内には多くの翻訳業者がありますが、ゴーさんに頼みたいという人は大勢います。先ほどの女性の話です。

(テープ)

「ゴーさんを信頼しているからですね。今は英語に堪能な人も多いですが、手紙の書き方というのはゴーさんほど経験がないでしょう。私の親の時代にも、何かあったら、ゴーさんに頼んでいました。」

ゴーさんは、毎朝8時から午後3時まで働きます。一日平均で5通から7通の手紙を代筆します。料金は1枚当たり5千ドンから1万ドン、日本円でおよそ25円から50円程ですが、翻訳料は無料だそうです。ゴーさんの話です。

(テープ)

「今は翻訳を頼む人は少なくなっていますね。インターネットやスマートフォンが発達したからね。外国宛の手紙の代筆の依頼が多いです。ラブレターや挨拶状、ビジネスレターなど様々ですが、依頼人の希望に合わせて、言葉を選びながら書きます。」

サイゴン中央郵便局の代筆職人    - ảnh 2

ゴーさんはフランス植民地時代に学校でフランス語を学び、17歳の時にサイゴン中央郵便局に就職しました。1990年に定年を迎えましたが、引き続き、郵便局内での仕事を希望して、代筆業をするようになりました。それ以来、この27年間、およそ20キロにもなる黒いカバンをいつも携えて、郵便局に現れます。カバンの中身は、英語とフランス語の辞書、ペン、通帳、拡大鏡といった仕事道具です。ゴーさんの話です。

(テープ)

「辞書は必要ですね。年齢的に単語を忘れることもよくあるので、辞書を引きます。でも辞書にはないベトナム語だけの言葉も沢山あります。例えば、『セーオム』というバイクタクシーを表す言葉もそうです。そういう時は、手紙を受け取る相手が判りやすいように、説明しなければなりません。」

どうして代筆の仕事を続けるのかを尋ねられると、ゴーさんは「自分が社会の役に立てる元気があるのは、うれしいことです。これからもできるだけ頑張ります。」と話します。謙虚な態度の中にも、芯の強さがあるゴーさん。いつまでも、サイゴン中央郵便局で、なくてはならない存在であるよう、多くの人が願います。

ご感想

他の情報