(VOVWORLD) - 春の農作業が一段落する頃、東北部クアンニン省ビンリェウ県に住む少数民族サンチ族は、「3月祭り」とも呼ばれる「ソーンコ祭り」の喜びに浸ります。この数百年続く祭りは、国家無形文化遺産に指定された民謡「ソーンコ(Soong Co)」の精神的価値を広く伝え、保存・発展させることを目的としています。
(ソーンコの歌声)
「ソーンコ」とは「掛け合い唄」「恋唄」「歌垣」を意味し、サンチ族に長く受け継がれてきた心の糧です。サンチ族が人口の80%を占めるフックドン村のセン・ティ・ハーさんは、この民謡を「心に刻んだ」と語っています。
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「私は生まれた時からソーンコに親しんできました。村から村へと渡り歩き、結婚式や祭りでは夜通し男女がソーンコを歌い交わすのです。そして夜明けには別れを惜しむ歌を歌うのです」
山々や田畑、川辺に、若者のソーンコが風に乗って響き渡ります。伴奏は一切なく、柔らかくのびやかな歌声が情熱的に歌い上げられます。男女の掛け合いもあれば、複数のグループが合唱する場合もあります。歌詞は豊かで多彩、労働や自然、国土を詠むだけでなく、人間や恋愛も賛美します。
(ソーンコの歌声)
サンチ族は年中ソーンコを歌います。旧暦3月16日のソーンコ祭は、この民族にとって特別な祭日です。ベテラン歌手のチャック・バン・ティンさんは、祭りごとに重要な役割を果たし、数百の古謡を記憶し、新曲を創作して子々孫々に伝承しています。
(テープ)
「若い頃からソーンコを歌ってきました。祭りや行事にはいつも参加してきました。歌詞の意味を理解することは本当に意義深いことです。仲間と一緒に、これらの歌を学び、保存し、後継者に伝えていきます。サンチ族の民謡を守り続けたいのです」
2005年以降、ビンリェウ県ではソーンコ祭を本格的に毎年開催しています。伝統的な歌の他に、民族交流の場や伝統遊びの場としても活用されます。目隠しをしてアヒルを捕まえるゲームやコマ回しなど、様々な遊びで参加者は才能を競い合います。
ソーンコ祭には毎年多くの観光客がクアンニン省を訪れます。地元住民にとっても、サンチ族の独特な文化を紹介する良い機会となっています。バクニン省からの観光客の話です。
(テープ)
「2回目のソーンコ祭です。この祭りを通して、この地の民族の文化、生活、人々を理解できました。そして彼らの温かさや寛容さ、おもてなしの心に触れられました」
昨年末、クアンニン省に暮らすサンチ族の民謡「ソーンコ」が国家無形文化遺産に認定されました。これにより、ソーンコの保存と発展への機運が高まりました。ソーンコはサンチ族の心の糧であると同時に、北東国境の山岳地帯に特色ある文化をもたらしました。クアンニン省ビンリェウ県では、この貴重な遺産を守り続け、現代生活に生かしていく素地が築かれました。