(VOVWORLD) - 北部山岳地帯のラオカイ省シマカイ県にあるタオチュピン村サンチャー集落では、少数民族トゥーラオ族が日常生活や祭事、正月、結婚式などで伝統衣装を着用しています。この衣装は手織りと手刺繍による手作りで、シンプルな色使いながら、緻密な縫製と刺繍が特徴的です。その丈夫さと独特の美しさは、職人技の結晶といえます。
自家製の木綿生地 |
(トゥーラオ族の伝統音楽)
トゥーラオ族の伝統衣装は、自家製の木綿生地を使用し、黒を基調としています。装飾は控えめですが、その文様には自然や日常、労働の様子が表現されています。サンチャー集落のルー・スアン・トゥオン村長は伝統衣装について次のように語りました。
(テープ)
「昔は藍の栽培が盛んでしたが、今では少なくなってしまいました。そのため現在は、染料と褐色の根を一緒に煮出し、それを布に染み込ませては乾かすという工程を2、3回繰り返して、黒と藍色の布を作っています。トゥーラオ族の女性の伝統衣装は、スカートと上着の二部構成が基本です。特にスカートは装飾模様が豊かで、手の込んだ作りになっています。上着にも美しい装飾が施されますが、男性の衣装は女性のものより控えめで、主に黒色を使います。祭りや正月には、村中の人々が伝統衣装に身を包み、村の中を思い思いにそぞろ歩く姿が見られます」
上着の特徴は、右脇開きの立て襟で、布製のボタンを使用しています。他の少数民族同様、トゥーラオ族の女性たちも衣装に合わせて装飾品を身につけます。特に銀の装飾品は幸運をもたらすとされ、好んで使用されています。タオチュピン村女性会のタオ・ティ・サオ会長は次のように語りました。
(テープ)
「私たちトゥーラオ族の人々は、家族に必要な衣服を自分たちの手で作ることを大切にしています。現代になっても、女性たちは民族固有の伝統を守り続けており、祭りや正月になると、誰もが誇らしげに美しい民族衣装を身にまとっています」
織りと縫製の技術を教えあっている女性たち |
特筆すべきは、母から娘へと織りと縫製の技術が確実に受け継がれていることで、これにより伝統衣装は近代化の波にさらされることなく、その本来の姿を保っています。サンチャー集落のバン・ティ・ビエンさんは、技術継承への強い思いを語り、次のように述べています。
(テープ)
「この伝統衣装を着るたびに、私たち女性は深い誇りを感じます。私自身、衣服作りの技を持つ年配の方々からもっと多くを学び、そしてその大切な知恵を若い世代へと伝えていくことで、トゥーラオ族の文化を守り続けていきたいと考えています」
サンチャー集落には100世帯以上のトゥーラオ族の人々が暮らし、家族全員が1〜2着の伝統衣装を持っています。この集落のセオ・ティ・レーさんは次のように語りました。
(テープ)
「母が布を織る時、いつも私に『これは将来必要になるから』と言って、丁寧に技術を教えてくれました。私たちトゥーラオ族の暮らしには布が欠かせません。日常着はもちろん、赤ちゃんを背負うためのおんぶひも、そして大切な人を見送る時の装束まで、すべて自分たちで作ります。だからこそ、どの家でも常に織り上がった布を用意し、必要な衣服を作り続けているのです」
トゥーラオ族の衣装の模様は、他の民族とは一線を画す独自性を持っています。特に祭事や儀式の際に着用される衣装には、この民族特有の美意識や信仰、道徳観、そして願いが込められています。トゥーラオ族の人々にとって、伝統衣装は単なる衣服を超えた、文化的・精神的価値を持つ大切な遺産なのです。