漁師のマイフンリュウさんは中部クァンガイ省リソン県の沿海部に生まれました。リュウさんは46歳で背が高く、陽やけした肌を露出させている元気な漁師です。リュウさんについてのエピソードはクァンガイ省だけでなく、ベトナム国内でもよく知られています。この30年あまり、彼はベトナム東部海域にあるホァンサ群島で、漁獲を続けています。近年、彼の漁船は4回も、外国船に拿捕され、全ての漁獲物を押収され、 多額の罰金を支払いました。しかし、彼は決して、あきらめず、再び波を越えてホンサー群島へ向かい、漁獲を続けています。リュウさんはリー・ソン県の貧しい漁師なので、漁船を修理するため、いまなお、銀行から多額の借金をしています。リュウさんは次のように語っています
(テープ)
「リー・ソン県に住む多くの人々は「家庭が貧しいのにリュウさんがなぜ危険な沖合いで漁獲することが大好きなんだろう」と言いますが、ホアンサー群島の海域は祖母が生きていた時代から大漁に恵まれたベトナムの漁場なんです。ですからその海域で漁獲するのは当然のことです」
そうした信念を持つリュウさんは、引き続きホァンサ群島へ向けて海域を走らせています。リュウさんは次のように語りました
(テープ)
「私が海へ出かけるたびに、妻は心配そうな顔でいいます。“ホアンサー群島に行かず、チョンサー群島で漁業してね”」と。しかし、漁船は勇敢に波を越えて、ホアンサー群島の海域へと向かってしまうのです」
リュウさんにとって、ホアンサーは馴染み深い海域には彼の血と肉が染み込んでいます。この海域で漁獲したいというリュウさんの決心は幾度となく彼の家庭経済に悪影響を与えてきましたが、リュウさんの奥さん、ファンティランさんはご主人の仕事に理解をしめし、次のように語っています。
(テープ)
「主人がこれからホアンサー群島の海域で漁獲するとき、“捕まらないようにね”と言いました。家族の漁船には夫だけでなく、息子もいますから、私は全てのことが分かります。彼の漁船が無事に戻ってくるまで心配です」
ランさんの話でした。
リュウさんは15歳の時から沖合いに出かけ、リソン県の漁民家族の伝統を維持し、いつもホアン・サー群島の海域で漁獲をしてきました。リュウさんは次のように語っています。
(テープ)
「ホアン・サー群島はべトナムの“老母の臍”と言われています。ですから昔からべトナムの漁民はこの海域で漁獲をしてきました。私は全ての財産を失ってもご先祖からの領海を守るため、ホァンサ群島の海域で漁獲を続けます。」
2011年の暮れ、マイフンリュウさんは「第9回栄光のべトナム」と銘打った国内各地の代表による交流会に出席するため、初めてハノイにやって来ました。この交流会で、彼は様々な分野で優秀な成績を納めた多くの人物と出会いました。そして、故郷に戻ったリュウさんの決意は再び海へ出て、太陽の日差しの下で、魚とエビで溢れる船を眺めるということです。