(VOVWORLD) - ベトナム政府が国境地域の教育を大きく変える画期的な政策を発表しました。
ランソン省の国境地帯にある分校の授業風景。 |
ベトナムは陸上国境にある248の村すべてに、小中学校を統合した全寮制学校を新たに建設する方針を明らかにしました。これはベトナム初の取り組みで、教育格差の解消を目指すものです。
ベトナムの国境地域には956の学校があり、62万5千人を超える生徒が通っています。しかし、宿泊施設が大きな課題となっています。全寮制や半寮制を希望する生徒は33万人以上いるのに対し、実際にそうした環境で学べる生徒は全体のわずか2割程度にとどまっているのが現状です。
1校650万ドルの大型投資
今回の計画では、国が1校当たり平均1500億ドン、およそ650万ドルを投資します。各学校は東京ドーム1個分ほどの5ヘクタールの敷地に建設され、教室、食堂、実験室、運動場、体育施設が完備される予定です。
現地の声をお聞きください。ソンラ省ムオンラン村のファム・ヴァン・トゥアン校長は次のように話しています。
(テープ)
「新しい学校の建設は地域住民の長年の夢でした。教師も生徒も、充実した環境で学べることを心待ちにしています」
建設は段階的に進められます。まず今年中に100校をモデル校として完成させ、その成果を踏まえて2から3年かけて全248校の建設を目指します。7月27日、ファム・ミン・チン首相は関係機関に対し、2026年8月末までに最初の100校を完成させるよう指示を出しました。
ソンラ省の調査団が、ムオンラン村における
小中一貫校の建設予定地を視察。
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地方も積極的に準備
地方でも準備が本格化しています。ソンラ省では13の国境村に44校の建設が予定されており、省のグエン・ディン・ベト人民委員会委員長は次のように語りました。
(テープ)
「これは国境地域の教育を根本から変える大きなチャンスです。各村には学校建設の候補地を選んでもらい、3から5ヘクタールの用地を確保していただきたいと思います。私たちの専門チームが現地に赴いて、一緒に最適な場所を選定していきます。同時に、生徒数や現在の学校施設の状況、そして道路整備の必要性なども含めて、総合的に検討を進めてまいります」
また、中部のダナン市でも6つの村で学校建設が計画されており、市のグエン・バン・クアン党委員会書記は「来年度には完全な設備を備えた全寮制学校を開校させる」と表明しています。
教育を超えた国家戦略
この取り組みの背景には、ベトナム政府の深い考えがあります。これまで山間部や国境地域では校舎が不十分で、教員不足も深刻でした。
今回の政策は単なる学校建設ではありません。国境地域と都市部の格差を縮め、地域に根ざした人材を育てることで、国全体の持続的発展を図る国家戦略なのです。
特に注目されるのは、学校建設と合わせて来年度から小中学生への昼食支援も始まることです。これにより子どもたちがより良い環境で勉強に集中できるようになります。
ベトナムのこの大規模な教育投資は、困難な環境にある子どもたちに平等な教育機会を提供しようという強い意志の表れと言えるでしょう。