シリアのクルド勢力SDF、暫定政権の傘下へ 国内融和へ一歩
(VOVWORLD) - 今回の合意文書には、クルド人の権利を保障することが明記されており、SDFの支配地域にある空港や国境検問所、石油施設などの民生・軍事機関を暫定政権と統合することが盛り込まれました。
シリア民主軍(SDF)の隊員たち(写真:Reuters/TTXVN) |
シリア大統領府は10日、北東部を支配しているクルド人主体の旧反体制派「シリア民主軍」(SDF)を暫定政権の国家機関に統合すると発表しました。SDFは国軍の傘下に入る見通しで、国内の融和に向けた大きな一歩となります。
SDFはシリア内戦でアメリカ軍の支援を受け、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討に当たってきました。しかし、暫定政権に近いトルコはSDFを、トルコ国内で武装闘争を続けていた「クルド労働者党」(PKK)とみなし、敵対してきました。昨年12月にアサド政権が崩壊して以降、トルコが支援する武装組織とSDFの衝突が激化し、暫定政権にとって大きな課題となっていました。
今回の合意文書には、クルド人の権利を保障することが明記されており、SDFの支配地域にある空港や国境検問所、石油施設などの民生・軍事機関を暫定政権と統合することが盛り込まれました。
トルコでは今月1日、PKKが創設者オジャラン氏の呼びかけに応じる形で即時停戦を宣言しました。SDFは「シリアとは無関係」としてきましたが、PKKとトルコが和解に向かう流れが影響した可能性もあります。今後、トルコ側とSDFの衝突が収束するかが注目されます。
一方、シリア北西部のラタキア県やその近郊では、6日以降、アサド政権を支持する武装集団と暫定政権の治安部隊との衝突が発生し、治安が急速に悪化しています。前政権の支持層とされたイスラム教少数派アラウィ派の住民に対する報復も相次いでおり、在英民間団体「シリア人権観測所」によると、民間人だけで少なくとも973人が殺害されたと報告されています。
シリア国防省は10日、掃討作戦の終結を宣言しましたが、その後も民家の略奪や放火などの事例が報告されており、治安の安定が喫緊の課題となっています。(毎日新聞)