ＥＵでは２０２２年１月から、発電や輸送、製造などさまざまな経済活動のうち、一定の環境基準を満たし「グリーン」と見なせるものを分類するルールの運用が始まります。政策当局や投資家、企業に統一的な評価基準を提供し、脱炭素化資金を呼び込む狙いです。
ただ、原発と天然ガスについてはＥＵ内の意見集約が進まず、グリーン認定可否の判断が先送りされてきました。欧州委の具体案公表は、当初予定した年内から年明け以降にずれ込む見通しです。
国内発電の約７割を原発に頼るフランスを筆頭に、新設原発の利用を進めるフィンランドやチェコなど１０カ国は、今年１０月の共同声明で、原発のグリーン認定を要求しました。こうした動きを受け、フォンデアライエン欧州委員長は「安定的エネルギー源の原発は必要」と表明し、認定を示唆しました。輸入に依存する化石燃料の高騰に不安が広がることも、原発活用の追い風となっています。

しかし、安全性や放射性廃棄物の問題から原発の持続可能性への疑念も欧州では根強いです。ドイツなど５カ国は、１１月の共同声明で「（制度の）信頼性や有用性を損なう」とグリーン認定に反論しました。国内の原発利用を４０年以上禁じてきたオーストリアでは、欧州委を提訴する案も浮上しています。
またドイツは、脱原発や脱石炭を進める一方、天然ガス活用を訴え、フランスと一線を画してきました。就任間もないショルツ首相は「各国が自らの取り組みを追求できることが重要」とフランスにも配慮した姿勢を示しますが、連立を組む緑の党のハーベック副首相は、原発の認定を「支持しない」と明言します。
欧州委の提案は過半数の国が反対しなければ成立しますが、ＥＵの政策全体を左右する問題だけに禍根を残す恐れもあります。（時事）