（写真：ロイター）

欧州連合（EU）欧州委員会は19日、加盟国間で軍の部隊や装備を迅速に移動させるため、国境通過手続きや通関処理を最大3日以内に抑える制度案を公表しました。ロシアによるウクライナでの軍事行動が続く中、軍の機動力向上を図る狙いがあり、2027年までの実現を目指すとしています。

EU域内の自由移動を認めた協定になぞらえ「軍事シェンゲン」と名付けられた制度案では、国境をまたぐ移動の許可手続きを加盟国間で統一し、軍用車両の事前申請などを簡素化するほか、緊急時には優先通行枠も設けるとしています。これにより、EUや北大西洋条約機構（NATO）が主導する軍事作戦に要する時間の短縮を図るねらいです。

また、域内の主要な鉄道・道路網を軍事輸送に対応できるよう整備し、加盟国間で軍用車両などの輸送手段を融通する仕組みも導入します。さらに、港湾や送電網などの重要インフラについては、サイバー攻撃やエネルギー遮断に備えて防護を強化し、有事でも輸送を維持できる体制を整えるとしています。

記者会見したEUのカラス外交安全保障上級代表（外相）は「部隊の移動が速いほど抑止力は高まる」と強調しました。（時事通信）