山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナムの少数民族タイ族の遊び、トンコン、これはネムコンとも言われますが、その遊びについてお伝えします。これは、テト明けの祭りでも行われます。
山崎 先々週のハノイ便りで、ベトナムの旧正月テト明けには、全国各地で色々な祭りが開かれるとお話しましたね。お祭りではどんなことが行われるんですか?
ソン 神様を供養する儀式のほかに、それぞれの民族伝統の遊びなども欠かせないものになっています。
山崎 今日の話題のタイ族ですが、よくその名前を聞きます。少数民族の中でも多いですか?
ソン 2009年の国勢調査によりますと、タイ族の総人口はおよそ150万人で、3番目に多いベトナムの少数民族です。
山崎 どの辺に住んでいるんですか?
ソン 主な居住地は、北部と中部の山岳地帯です。タイ族は昔から稲作を行っていて、独特の文化を持っています。トンコンはタイ族にとって、特別な意味がある遊びなんです。
山崎 トンコンとは、どういう意味ですか?
ソン ベトナム語でトンは投げる、コンとは布で作ったオレンジ位の大きさがある球です。球体に糸を巻き付けた日本の手毬とだいたい同じものです。色とりどりの布地で作られます。コンの中に籾殻のついた米や綿の実、豆などを入れることもあるそうです。
山崎 トンコンは、球を投げる、という意味なんですね。
ソン はい。全ての物を繁栄させたいという願いや空の高いところへ飛びたいというタイ族の人たちの願いをこめたものとされています。
山崎 なるほど。手毬のようなコンは、手作りなんですよね?
ソン そうです。コンは、多くの色が使われれば使われるほど綺麗だと考えられています。綺麗なコンは幸福と繁栄を表しているということです。
山崎 何か言い伝えみたいなものがあるんでしょうか?
ソン 昔、タイ族の男女が田植えをした時、苗の束を互いに投げ合ったことから、このトンコンという遊びが生まれたと言われています。
山崎 ちょっとロマンチックな感じですね。トンコン、ネムコンとも言われるようですが、どんな遊びなんですか?
ソン 長い竹の棒の先に取り付けられた輪っかにコンを投げ入れる遊びです。輪っかの表には太陽を意味する赤い紙、裏には月を表す黄色い紙が貼られます。通常、竹の棒は10メートル程ですが、20メートル近くになることもあります。
山崎 輪っかの大きさ、直径はどれくらいなんですか?下から高いところに投げ入れるというのは、なかなか難しいですよね?
ソン そうですね。輪の直径は50センチから60センチくらいと小さいです。輪っかには紙が貼られていますが、コンが輪を通って穴があくまで投げなければならないんです。
山崎 穴があかないとどうなるんですか?
ソン 幸運が減るとされています。どうしてもだめな時、穴があかない時は、日が暮れないうちに猟に使う銃などで穴をあけるしかありません。
山崎 それは必死ですね。でも幸運が減ると言われては何とかしたいですよね。
ソン そうですね。北部の山岳地帯、ライチャウ省に住むタイ族の女性( Tong Thi Than) の話です。
(テープ)
「毎年、新春には、コンを作って、トンコンを楽しみます。タイ族にとって、欠かせない伝統的なものなんです。」
ソン ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
山崎 「~」をお送りしました。
ソン タイ族の祭りにコンを投げる遊びは欠かせないものです。タイ族の人たちは、大人数が集まることのできる村の広い場所でその遊びを楽しみます。ライチャウ省に住むタイ族の女性( Khoang Thi Duyen)の話です。
(テープ)
「竹の棒の先に付けられた輪っか、そこに貼ってある紙に、コンで穴をあけられた人が勝ちです。参加者が2つのグループに分かれて、勝敗を競う場合も多いです。」
ソン 毎年、旧正月後には、タイ族の村では様々な祭りが行われます。その祭りで、若い男女は綺麗な衣服を身にまとって、コンを投げる遊びに参加します。
山崎 このトンコン、ネムコンは、タイ族の若い男女が自分の気持ちを表す場でもあるようです。ここから、生涯の伴侶を見つけるケースも多いということです。
ソン コンを投げる遊びは、伝統文化でもありますが、スポーツでもあります。住民同士の結びつきも深まります。
山崎 伝統的なものは、やはりそれだけ長い間伝わるようないろいろな意味を持っているんですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ベトナムの少数民族タイ族の伝統的な遊びについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。