戦時下の手紙の人文的価値

(VOVWORLD) -その30年間、戦地から家族や恋人にあてた数多くの手紙が届けられました。これはベトナムの民族独立を守るための闘争を真実に反映するものとされています。
戦時下の手紙の人文的価値 - ảnh 1(写真:nguoihanoi.com.vn)

ベトナムは1946年から1975年までのおよそ30年間にわたり、フランス植民地主義者、のちに、アメリカ帝国主義者との戦いをしなければなりませんでした。その30年間、戦地から家族や恋人にあてた数多くの手紙が届けられました。これはベトナムの民族独立を守るための闘争を真実に反映するものとされています。

2017年7月27日の「ベトナム傷病軍人戦没者の日」70周年を記念するにあたり、軍人であり、現在作家のダン・ブオン・フン氏の「ベトナムの戦時下の手紙」という本が「顕彰賞」に選ばれました。この本は南部完全解放祖国統一30周年にあたり発動された「ベトナムの戦時下の手紙と日記の収集、編纂、出版キャンペーン」の一環として出版されたものです。

この本は戦地から送った127人の300通の手紙をまとめたものです。手紙を書いた人たちは国家主席から、労働者、農民、兵士、青年先鋒隊など社会のあらゆる階層の人々ですが、共通点はすべての人々が戦争中に生活した経験があるということです。

この本の中で、ルオン・ナム・ティンという兵士が戦場で犠牲になる前、家族に送った手紙があります。その内容の一部は次の通りです。「1968年1月20日南部にて。お父さん、お母さん、お兄ちゃんへ。お父さん、お母さんを離れて戦場に向かう時、私はまだ16歳前でしたが、現在は戦争の中で成長しています。戦場に向かう時、私たちの故郷が敵軍により大きく破壊されたことを目撃していたので、どんな困難に直面していても乗り越えられます。家族からの手紙を待ち望んでいます。家族からの手紙は私を大きく励ましてくれます。国が統一された時、お父さん、お母さんに再会できるでしょう」。

それぞれの手紙は戦争に参戦している兄さん、お父さん、夫や妻、子供、友人の心情を表しています。作家のダン・ブオン・フン氏は次のように語りました。

(テープ)

「戦時下に書かれた手紙は今とかなり違います。これらの手紙の紙は様々な種類で、万年筆とかボールペンなどで書かれました。当時、戦争時代ですから、ベトナムは何かも不足していたのです。その時、手紙は主要な連絡手段でした。後方から戦場へ送る手紙は個人と個人との気持ちを表すものでしたが、戦争中は、これらの手紙は共通のものとなってきました。そのため、戦場からの手紙を受け取った時、一個人や一家族だけでなく、隣近所の多くの人々が一緒に読める場合がたくさんありました。逆に、戦場にいる兵士が夫や恋人からの手紙を受け取った時、戦友たちも読めた場合もありました」

戦場から送られてきた手紙はいずれも敵軍との戦いや戦友が亡くなったことなど戦場の生活を物語っています。先ほどのダン・ブオン・フン氏はさらに次のように語りました。

(テープ)

「戦時下の手紙は単に個人が個人に送る手紙であるだけでなく、記事や新聞のようなものでもありました。これらの手紙は後方にある生活や戦場における生活を物語るからです。より重要なことは手紙を受け取ると戦場にいる人が変わることなく健在であることが分かるということです。手紙を書いた日から半年後、または、1年~2年後に始めて受け取った場合もありました。これらの手紙は戦時下に住んでいる人々にとって精神面における重要な心の拠り所となていました」

また、これらの手紙は恋人や配偶者、両親、兄弟などに対する個人的な愛情を表すだけでなく、戦場にいる人々の故郷に対する懐かしさ、託された任務を立派に果たすため努力する意識なども表しています。レ・ティ・キム・ズンさんは今になっても、50年前に戦場に参戦していた恋人が送ってきた手紙をはっきり覚えています。ズンさんの話です。

(テープ)

「戦時下に、戦場から一枚の手紙を受け取るととても嬉しいものです。戦場から送った手紙が3,4か月後受けたのです。彼の手紙をもらって、彼がまだ健在であることが嬉しいのです。」

戦時下の手紙はそれぞれの人々の心からの感情を表しています。手紙には戦争が早期に終結することへの楽観視や懐かしさ、恋しさ、寂しさも示しています。あの戦争が終結してから間もなく半世紀が経ちました。戦時下に書かれた手紙は時と共に古くなってきましたが、その人文的価値は変わることなく保たれてゆくことでしょう。


 

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