トアン医師

12年あまり前に、彼は、先天性欠損症に患った生活困窮者の子どもへの診療、手術を無料で行う「サラ」というクラブを設立しました。これまでに、トアン医師とクラブのメンバーらは、数千人の子どもに診療、治療を行ってきました。クラブのメンバーたちは北部山間部各省を訪れるたびに、現地の住民に無料の診察、手術を行い、生活困窮者の子どもは、往復の交通費や、診療代などがサポートされます。

これらの有意義な活動を提唱したトアン医師は次のように明らかにしました。

（テープ）

「整形外科の専門医である私たちは、出来るかぎり患者の治療に貢献したいのです。1度に数百人という大きな規模ではなく、およそ10人程度に手術をするだけです。しかし、これらの患者は、優れた医療技術を受けられるほか、手術後の入院治療費がサポートされます」

クラブのメンバーには、トアン医師の同僚、学生が多くいます。メンバーの一人であるベトドク病院上肢手術・スポーツ医学科の副科長ファン・バ・ハイ医師は、トアン医師について次のように明らかにしました。

（テープ）

「トアン先生は、慈善活動に積極的に参加し、先天性欠損症の子どもに診療、治療を行う意欲に満ちています。私と先生は何度も北部の国境地域、僻地を訪れ、現地の子どもたちを診療しました。多くの子どもの患者は、生活困窮者でした。私たちは、自助努力のほか、業務を利用して、これらの子どもを助けたいと思い、今も、年に2回これらの地方で診療・治療を行っています」

トアン医師は、地方で診療・治療を無料で行う傍ら、地元の医師、特に若い医師に手術、治療の知見を共有しています。まもなく70歳になるトアン医師は、40年以上の整形外科の経験を持っており、ベトナム国内の優秀な整形外科専門医として評価されています。

トアン医師はさらに次のように語っています。

（テープ）

「患者さんを診察するとき、いろいろな話をしたり、病状などを尋ねたり、こちらから説明をしたりする必要があります。どんな時も、患者が分かりやすいように医学専門用語を使わず、最も簡単な言葉で説明するようしています。また、手術のときには、タカのような鋭い目、ライオンのような勇敢な心、そして、女性のような柔らかく温かい両手が必要です。つまり、手術時には問題をしっかりと見ることができるように、目は鋭くなければなりません。勇気を持って、難しいとは思わず、問題をよく観察して、思い切ってやらなければなりません。柔らかく温かい両手は患者を救い、治療するためです」

トアン医師は、後輩の医師たちに専門業務のほか、ライフスタイルについて教えました。先ほどのハイ医師はさらに次のように述べています。

（テープ）

「トアン医師から2つのことを学びました。先ずは、整形外科の医師になるための専門的業務です。先生は、簡単なケースから難しいケースまで、そして手術の技術などを教えてくれました。次には、先生からライフスタイルを学びました。先生は、「医師は病気を治療するだけでなく、人を治療する」と言いました。患者の病状はそれぞれ違いますから、医師が患者の境遇を把握せずに、病気だけを治療してもその病気を根絶することはできません。過去12年間、先生と一緒に仕事をして、先生から学んだことは、例え小さなことでも、生活に意義のあるものばかりです」

現在、トアン医師はベトドク病院を定年退職してしまいましたが、同病院の顧問として難易度の高い診察と手術を実現しています。同時に、ハノイ医科大学のハイレベル医師、研修生の育成コースに講師として参加しています。トアン医師は、「健康であるかぎりベトナムの医療に貢献し、恵まれない子どもの患者に喜びをもたらしたい」という意欲を表明しました。