女性画家のダン・アイ・ベト( Dang Ai Viet)
2013年5月、ベトナムの女性画家のダン・アイ・ベト( Dang Ai Viet)さんはインドに本部を置くアジア記録組織から、「英雄称号を持つ母親( Me Viet Nam anh hung)を最も多く描いた画家」として認定されました。ちなみに、「英雄称号を持つ母親」というのは戦争で子供と夫をなくした女性です。
アイ・ベトさんがこれまでに描いた1000点あまりの「英雄称号を持つ母親」(以下“英雄の母”)の肖像画は小柄な60歳のアイ・ベトさんにとって、ほんとうに貴重な財産であり、「英雄の母」に対する尊敬の現われを示すものです。
かなり前から、画家のダン・アイ・ベトさんは全国各地を回って「英雄の母」たちの肖像画を描く夢を抱いていましたが、2010年までにその夢がやっと叶い始めました。彼女は、抗米救国闘争時代における女性解放連合会の幹部を務めていたので、戦争中における女性の姿に敬意を払っています。
2010年2月に、小型バイクのシャリーで北部へ向かいました。3年の間に全国各地を回り、「英雄の母」たちに会い、絵を描いてきました。2013年4月27日までに、1022点の肖像画を仕上げました。
女性画家ダン・アイ・ベトさんは次のように語りました。
(テープ)
「『英雄の母』の姿はいつも私の脳裏に焼きついています。誰に対しても同じ感情を持っています。しかし、描くときに、最も感動させられた母親もいました。それは、一人しかない息子が犠牲になった母親でした。今でもそれぞれの母親を覚えています。」
このように語ったアイ・ベトさんは、それぞれの母親たちは「今日のように平和な暮らしを与えてくれた犠牲についての長編物語である」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「『英雄の母』を描くのは大変難しい事だと言えます。というのは、母親らの瞳の中には多くの矛盾が存在しているからです。母親らは平穏な暮らしが送れるようになったものの、心の中には犠牲になった息子への思い出があります。母親を描く時は、母親の記憶を辿っている気がします。母親と話し合いながら、母親の物語を耳に傾けると、私と母親との間に絆が生まれ、それが芸術作品に仕上がったのです。」
平野部から山間部まで、そして、南部から北部まで、英雄の母がいるところがあれば、アイ・ベト画家の姿があります。幸いな事は、その間に、彼女が重い病気になったことがないという事です。
アイ・ベトさんについて、「英雄の母」の一人であるカオ・ティ・ドクさんは次のような思い出を明らかにしました。
(テープ)
「午前中9時ごろから12時過ぎまでベッドに座った私の肖像画を描きました。描き終わった頃、丁度昼ごはんの時間ですので、彼女は私の家族と一緒に食べました。」
アイ・ベトさんは「英雄の母」の肖像絵画1022点をベトナム女性博物館とホーチミン市美術博物館に贈呈しています。
画家ダン・アイ・ベトさんについて、画家チャン・カイン・チュオンさんは次のように明らかにしました。
(テープ)
「アイ・ベトさんは自分のためにこの道を選びました。これは、自分自身のためではなく、国のためのものです。彼女がバイクで全国を回って絵を描いたのは敬服されるべきです。それぞれの母親、特に高齢の母親を描き、その母親の表情を現れたこともアイ・ベトさんの大きな努力です。」
画家ダン・アイ・ベトさんにとって、「英雄の母」の肖像絵画を描く事は幸せであり、貴重な誇りでもあるようでした。これらの母親たちに出会い、肖像画を描き留めることは幸福なことです。しかし、彼女はまだベトナム全国に住む3分の1の「英雄の母」の肖像画を描いただけであることを残念に思っているようでした。