(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグエン地方に暮らす少数民族ムノン族には、代々受け継がれてきた貴重な楽器があります。「ゴン・プラック」と呼ばれる特別な銅鑼です。
この高原地帯の先住民族は、村の祭りや儀式で様々な銅鑼を演奏しますが、ゴン・プラックは最も希少で特別なものとされています。人々はこの銅鑼を、大切な祭礼でのみ使用します。しかし、時代の変化とともに、現在ではダクノン省をはじめ高原地帯全体で、ゴン・プラックはごくわずかしか残っていません。
ゴン・プラックセット |
ゴン・プラックは、銅と銀の合金で作られています。一般的な銅鑼とは材質が異なり、突起のある3つの銅鑼で一組となっています。直径は15センチから20センチほどで、長い年月を経て、銅色に黒ずんだ光沢を帯びています。
(ゴン・プラックの音色)
その音色は実に独特です。石琴のように澄んで響き渡るとともに、重厚で威厳があります。大森林の中で長く澄んだ響きを持ち、時には力強く反響して、聞く者に神聖さと親しみを感じさせます。
ゴン・プラックを手に入れるのは、容易なことではありません。ムノン族は、多くの水牛や牛と交換しなければなりません。中には数十頭もの大きな水牛に相当する価値のある銅鑼もあります。そのため、裕福な家庭のみが所有でき、何世代にもわたって大切に受け継がれてきました。
ラムドン省ドゥック・アン村でゴン・プラックを保持している芸人のティ・マイさんは、次のように語ります。
(テープ)
「今では、ゴン・プラックを演奏できる人はほとんどいません。私たちの集落でも、ほんの数人しか使い方を知りません。この銅鑼は、私の家族で何代も受け継がれてきた貴重な財産です。私は父から教わり、今度は子どもたちや若い世代に教えています。演奏するたびに、ゴン・プラックの価値と意味を知ってほしいのです」
若者にゴン・プラックの演奏方法を教えているティ・マイさん |
演奏方法も特別です。まず、米酒と雄鶏を供えて銅鑼の神への儀式を行い、敬意を表します。そして、紐を持って銅鑼を宙に浮かせ、もう一方の手で木製のバチを持って突起を叩きます。すると、広く響き渡る美しい音色が生まれるのです。
ティ・マイさんは続けます。
(テープ)
「通常の銅鑼とは違い、ゴン・プラックはコミュニティの集会や豊作を祝う祭り、新居入居の儀式、村の祭祀といった重要な機会にのみ登場します。演奏前には必ず、銅鑼の神への儀式を行います。この儀式は至宝への敬意を表すものなのです」
かつて、人々がゴン・プラックの響きを聞けるのは、こうした特別な祭礼の時だけでした。しかし今日では、ベトナム文化を世界に紹介するため、国内外の観光客に向けて演奏を披露することもあります。
ただ、正しい演奏方法を知る人は少なくなり、主に高齢の演奏者たちが技を受け継いでいます。
同じく銅鑼楽団のメンバーである演奏家ティ・ゾンさんは、次のように話します。
(テープ)
「これはとても貴重なゴン・プラックです。重要な儀式の時にのみ、取り出して演奏します。ゴン・プラックを演奏すると、先祖の声が響いてくるように感じます。私たちはこれを大切に守り、次の世代に伝えていきます」
祭りでゴン・プラックが鳴り響く時、それは単なる楽器の音ではありません。先祖の声の響きであり、計り知れない精神的な遺産なのです。
ムノン族にとって銅鑼は、家族や氏族の社会的地位と権威を示すものです。中でもゴン・プラックは特別で、代々受け継ぐ至宝として、今も大切に守られています。