(VOVWORLD) - 首脳らは成果を強調しましたが、合意が完全に実現されるまでの道のりはまだ遠いとみられています。
(写真:Al Jazeera) |
EU=欧州連合は6月29日、各国の意見が対立する移民・難民対策について首脳会議を開き、難民か移民かを判断する施設をEUの内外に設置することで合意しました。しかし、施設を受け入れる国のあてはなく、実現性は不透明です。
前向きな一歩
合意によりますと、域外に置かれるEU共通の入域管理施設は、欧州を目指して地中海を密航する人が最初に上陸するイタリアやギリシャの負担を軽減し、あっせんビジネスや密航中の事故による犠牲者を減らす目的があります。設置場所や運用については当事国や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など国際機関と協議するが、密航ルートの経由地である北アフリカを念頭に置いています。
また会議では域内にもEU共通の難民申請を取り扱う管理センターを置くことを決めました。
EUでは、難民申請者が最初に到着した国が申請手続きに責任を負うと定める「ダブリン規則」があり、イタリアは受け入れ負担に反発しています。イタリアのコンテ首相は今回、自国の負担軽減が認められない限り他の議題で合意するのを拒否しました。その結果、EU外に難民・移民の流入を減らす施設の設置を検討するほか、難民申請者の管理収容施設を加盟国が自主設置することで妥協に至りました。
実現は難色か
しかし、その合意の実現性は疑われています。域内の管理センターは設立されますが、難民認定された人の受け入れ判断は加盟国の任意にとどめました。義務化にはポーランドなど東欧諸国が強硬に反対しており、これらの国は2015年の難民危機に伴いEUが全加盟国に一定数の難民受け入れを課した緊急対応策も無視しています。独のメルケル首相は29日、記者団に「合意は良い兆候」としたが、「相違を埋めるにはまだ多くの作業が残る」と述べました。
そして、難民・移民の流入を減らす域外の施設をどこに設置するかなどは決めませんでした。イタリアのサルビーニ副首相は6月25日、欧州を目指す難民・移民の経由地になっている北アフリカのリビアを訪れ、こうした施設を作る案を示しましたが、リビア側からは「法律上不可能だ」と拒否されたとしています。
首脳会談後、ドイツのメルケル首相は、「EU加盟国で極めて異なる視点を持つなかで、私たちは正しい方向への重要な一歩だというべき結果を達成した。もちろん、まだ道半ばだ」とのべました。
首脳らは成果を強調しましたが、合意が完全に実現されるまでの道のりはまだ遠いとみられています。