イラク北部で勢力を広げるアルカイダ系武装組織ISIS=イラク・シリア・イスラム国などと政府軍の戦闘が激化しています。政府側がヘリによる空爆で反撃を強める一方、ISISは16日、北部の町を新たに掌握しました。これにより、イラク情勢は悪化しており、収束の兆が見えていません。
ネットで公開されたISISが政府軍兵士を処刑したとする写真
ISISは同じ宗派であるイスラム教スンニ派の兵士は解放する一方、対立するシーア派を「1700人処刑した」と主張しています。地元メディアによりますと、イラク議会の安全保障防衛委員会も16日に「兵士たちが大量に殺害された」と確認しました。
内戦の危機
イラク国営テレビは16日、ISISの戦闘員を乗せた15台の車列をイラク空軍が空爆したと伝えました。これとは別に、空軍は中部ファルージャ北西でISISを空爆し、武装集団の200人あまりを殺害したとしています。イラク軍による南方からの反撃を受け、ISISはこの数日、モスル周辺で戦闘拠点を増やし、軍の大規模攻勢に備える狙いとみられます。
ISISはシリア国境に続 く主要道路沿いの都市タルアファル攻略で、シリア側の勢力圏への補給路や、北上するイラク軍を避けて本来の拠点である西部に戻るための迂回路を確保したい模様です。この状況から見れば、イラクでの紛争が内戦に発展すると言えます。
各国の動き
この状況は各国に深い懸念をもたらしています。イラク情勢が緊迫するなか、国連は首都バグダッドは安全だとしてきたこれまでの見方を改め、現地で任務に当たっている職員を国外に退避させる措置を取り始めました。
一方、アメリカのオバマ大統領は同日、議会に対し最大275人の兵士をイラクに派遣すると通知しました。ホワイトハウスによりますと、この派遣はイラク政府の同意を得ているということです。アメリカ国防総省は既に兵士約170人がイラク入りしていることを明らかにしました。
人道的危機
特に、この状況は人道的危機に繋がる恐れもあります。以上お話しましたように、ISISは15日、イラク北部モスル西郊のタルアファルを制圧しましたが、地元当局職員によりますと、タルアファルでは「殉教者、負傷者、避難民で混沌と」しており、同地域の人口の半分近くにあたる約20万人が避難しました。
国際世論はイラクの現在の情勢に深刻な懸念を示した上で、「この問題解決は国連をはじめ関係各側の難題となっている」との見方を示しています。