ベトナム 「管理」から「統治」へ 国づくりの新たな転換
(VOVWORLD) - 2021年の第13回党大会で、ベトナム共産党は初めて「国家統治」という概念を正式に打ち出しました。
それまでの「管理」中心の国づくりから、より現代的で透明性の高い「統治」へ。この転換は、来年開かれる第14回党大会の報告草案でもさらに明確化され、「デジタル政府の構築」と「国民に奉仕し、発展を生み出す行政」が目標として掲げられています。
第13回党大会 |
変わる行政サービス 現場から
北部カオバン省に住むホアン・ティ・ティエンさんは先日、地元の行政サービスセンターで土地の使用権譲渡手続きを行いました。
(テープ)
「職員の方がとても親切で、説明も分かりやすかったです。以前と比べて、手続きがずっと早く終わりました」
ティエンさんのような声は、今、ベトナム各地で聞かれるようになっています。背景にあるのは、今年7月から始まった地方行政の2層化です。これまで3層だった地方行政を2層に統合し、より効率的な体制を目指しています。
中部ダクラク省ホアフー村の人民委員会副委員長、ド・スアン・ヒエウさんはつぎのように話しました。
(テープ)
「これからの政府は『奉仕する政府』です。国民が来るのを待つのではなく、私たちから国民や企業のところへ出向いていく。そして、何を必要としているのかを積極的に聞き取り、それに応える政策や計画を作っていく。それが私たちの仕事なんです」
データが変える意思決定
政策研究の専門家、グエン・クアン・ドンさんは、この変化の核心をつぎのように説明しました。
(テープ)
「もともとベトナムは『国民のために』という理念を掲げてきました。ただ、デジタル技術の登場で、その実現の仕方が大きく変わったんです。以前は『申請して、許可をもらう』という関係でした。でも今は違います。オンラインで手続きができるようになり、どこに住んでいても行政サービスが受けられる。国民と行政の間にあった壁が、ぐっと低くなりました。もう一つ大きいのは、データに基づいて政策を決められるようになったことです。これで、意思決定のスピードが格段に速くなりました」
実際、北部クアンニン省では、リアルタイムで情報を集約する「知的運営センター」が稼働し、行政判断のスピードと透明性が向上しています。また、中部のダナン市では、市民と行政が直接やり取りできる双方向のデジタルシステムが導入されています。
多様な主体が参加する統治へ
ホーチミン国家政治学院のグエン・ヴァン・ダン博士は、この変化をつぎのように位置づけます。
(テープ)
「現代的な国家統治というのは、国だけでやるものではありません。企業や市民など、いろんな人たちが参加して初めて成り立つんです。もちろん、国や政治システムの役割が一番重要です。ただ同時に、民間企業などの力も段階的に取り込んでいく。党中央委員会が『新時代の企業と企業家』に関する決議を出しましたが、これは民間の役割をきちんと認めた、とても現代的な考え方だと思います」
トー・ラム共産党書記長も、国会での演説で次のように強調しました。
(テープ)
「これからの国家統治のあり方を、もっとはっきりさせる必要があります。それは、透明な法律と信頼できるデータ、最新のデジタル技術、そしてスリムな組織に支えられた統治です。職員は清廉で規律正しく、国民に奉仕する。こうした統治こそが『発展を生み出す統治』なのです。『お願いして許可をもらう』という古い統治ではありません」
ベトナムが目指すのは、党がビジョンを示し、国家が法に基づいて統治し、社会が国民の信頼と参加によって動く、そんな新しい国の形です。
急速な経済発展と国際化が進む中で、ベトナムは今、建国以来の大きな転換点を迎えています。