(VOVWORLD) - 今ベトナムでは「海洋・島嶼週間」という期間に入っています。6月1日から8日までの1週間で、国をあげて海洋経済の重要性をアピールしています。
大規模な省統合で「海の国」に変身
実は今、ベトナムでは大きな変化が起きています。8月15日までに、現在の63の省や市を34に統合する予定なのです。これは単なる行政区域の整理ではありません。統合の狙いは、海洋経済の発展にあるのです。
現在、ベトナムの63の省市のうち、海に面しているのは28、つまり44%です。ところが統合後は、34の省市のうち21が海に面することになり、その割合は62%に跳ね上がります。まさに全長3,260キロメートルの海岸線を擁するベトナムは「海の国」への変身と言えるでしょう。
この構想の背景には、トー・ラム書記長の明確なビジョンがあります。4月21日、南部地域の革命功労者との会合で、書記長は「海の力を最大限に活用して、山と平野と海を一つに結ぼう」との考えを示しました。つまり、これまでバラバラだった内陸の山岳地帯、平野部、そして沿岸地域を一体として発展させようという考えなのです。
この取り組みの狙いは、地方同士が協力することで、より大きな発展を目指すということです。専門家たちも、この方向性を支持しています。特に注目されているのが、中部高原地帯テイグエン地方と中部沿岸地域の連携です。山の豊かな資源と、海の交通の便利さを組み合わせることで、東西を結ぶ大きな経済軸ができあがる、ということです。
特に注目されているのが、メコンデルタ地域の変化です。チャビン省、ビンロン省、ベンチェ省が統合されることで、大きな発展の可能性が生まれています。
チャビン省人民委員会のグエン・クイン・ティエン副委員長は次のように語りました。
(テープ)
「3つの省が一つになることで、新しいビンロン省は、これまでよりもずっと大きな可能性を秘めることになります。中でも特に期待されるのが、チャビン省が持つ海洋経済への貢献です。エネルギー研究所の調査では、チャビン省だけで2万4千メガワット以上の風力発電が可能だという結果が出ています。これは非常に大きな数字で、この豊富な自然エネルギーを活用すれば、環境に優しい循環型経済や、グリーン経済への転換を目指すプロジェクトが実現できるでしょう」
ベトナム政府は2030年までの海洋経済発展戦略を7年前から進めていますが、実は課題も抱えています。
政府が計画した169のプロジェクトのうち、実際に動いているのはわずか35、つまり約2割にとどまっているのです。そこで政府は、各省庁や地域間の調整を強化することにしました。チャン・ホン・ハ副首相は「これが海洋資源を総合的に管理・開発する基盤になる」と説明しています。
ハ副首相によりますと、農業・環境省が中心となって、関係する省庁が協力する体制を作ります。そして、海洋開発に関する様々な問題を解決するための仕組みを作ります。その際の判断基準は3つです。環境への影響はどうか、経済的にメリットがあるか、そして雇用を生み出せるかどうか。この3つのポイントで最適な開発方法を選んでいこうということです。
一方で、より大きな問題については、国レベルの特別委員会が対応します。「海洋経済持続可能発展戦略実施国家指導委員会」が海洋開発の司令塔的な役割を果たすわけです。この委員会が扱うのは、例えば複数の省をまたがる大規模プロジェクトの調整や、国家的に重要な開発計画、さらには近隣諸国との関係に関わる国際的な問題などです。
ベトナムはベトナム東部海域(南シナ海)に面しています。国際的な海上交通路に近く、アジア太平洋地域の貿易の要衝に位置しているのです。この地理的な利点を活かして、海洋観光、海運業、石油・ガス開発、水産業、そして再生可能エネルギーなど、様々な海洋産業を発展させようというのがベトナムの戦略です。
ベトナムは今、「海から強く豊かになる」という目標に向かって大きく舵を切っています。海の持つ力を最大限に活用した省・市の統合と、長期的な海洋経済発展戦略の着実な推進が組み合わさることで、ベトナムは「海洋国家」として大きく飛躍する可能性を秘めています。まさに、海がベトナムを強く豊かな国へと導く原動力になるのではないでしょうか。