2012年12月21日日本政府は、在ベトナム日本国大使館において、ティエンドゥック(ThienDuc)高齢者介護センターとの間で10万3千ドル相当の草の根・人間の安全保障無償資金協力「ティエンドゥック高齢者介護センター機材整備計画」の贈与契約の調印式をお行いました。
ティエンドゥック(ThienDuc)高齢者介護センター
このセンターは、以前から日本国内の高齢者介護施設との交流を進めており、日本式看護・介護の手法を積極的に取り入れている民間の高齢者介護施設です。
約80平方メートルの会場で、マッサージの順番を待っている30人あまりのお爺さんやお婆さんたちがテレビを見ています。多くの人は車椅子で移動しています。
トウさんは、このセンターで5年間漢方専門の技術者として働いています。
(テープ)
「私の仕事は、毎日、入居者にマッサージをしたり、運動の補助をしたりする他、食事の補助もします。」
ティエン・ドゥックセンターの入居者は、最も重要なのは介護される傍ら、同じ年代の人々と交流し、共同活動に参加することが出来ます。
入居して3か月になるグェン・ロックさん85歳は、入居の理由について、次のように明らかにしました。
(テープ)
「長男は朝6時から夕方6時まで会社に行かなければなりません。私とメイドさんだけが家にいたので、とても寂しかったです。このセンターに入居したら、多くの同世代がいたので、楽しいです。寂しい時、この場所で遊んだり、テレビを見るために来ます。このセンターの食事や休憩、サービスはとても良いですよ。」
チェンお婆さん
一方、会場の隅の方では、ビ・ティ・チェンさん81歳が、ティッシュペーパーを折りたたんでいます。
(テープ)
「センターのスタッフは、食事から睡眠からなんでも面倒を見てくれます。センター長は、常に部下に対し『入居者を寂しくさせないないように、楽しくさせください」とよく注意しています。子どもらと一緒に住んでいる時は彼らが会社へ行くとき、泥棒防止のために、私一人を家において鍵をかけて行きました。とても寂しかったです。このセンターに入居して、とても嬉しくなりました。まるで私の実家のようです」
ところで、ティエンドゥック高齢者介護センターは、2009年に、ハノイ市トウ・リエム(Tu Liem)県ドン・ガック(Đong Ngac)村に設立されました。現在、同センターには 160人の入居者がおり、3人の医師と45人の看護師が常勤して対応に当たっています。
ゴックセンター長
同センターを設立するきっかけについて、タンニャン病院の院長助手であったグェン・トアン・ゴックセンター長は次のように明らかにしました。
(テープ)
「病院の廊下で、健康診断を見に来るある高齢者を見かけましたが、二日後に、その人と他の二人がまた健康診断を見に来ました。健康診断を見た後も、彼らは廊下で、色々な話をしていました。高齢者どうしが交流できる公共の場所を欲しがっているかしらと考えています。多くの分野で成功を収めた年上の人に生活の中で一番困難なことはなんですかと尋ねると、彼らの答えは小さい子の面倒を見ることではなく、自宅にいる高齢の両親の面倒を見ることだというのです。そこで、私は専門家の協力を得て、ティエンドゥック高齢者介護センターを設立することにしました。」
ところで、ベトナムでは1996年から民間経営モデルが大きく発展していました。そのような中、高齢者介護というモデルは先進諸国では、ずっと前からありましたが、ベトナムではまだ存在しませんでした。ですから設立当初、ゴックさんは様々な困難に直面しました。
テープ
「最大の困難は、ベトナム人を初めとする一般的なアジア人の考えでは『親を老人ホームに入れることは親不孝』という考えです。また、ベトナムでは、老人ホームというのは全く新しいものなので、親不孝は一層重くなります。私自身でさえも、この仕事に着手しようとする時に、家庭内からの支持を受けられませんでした。次に、経済的な困難。そして、当時、手本となるモデルがないので、施設のインフラも自宅と同じ様式でした。その時、私は両親と同じように入居者の面倒を見ていました。」
このように語ったゴックさんは「開設当初の3年間は入居者がとても少なかった。そのころ、20人ほどセンターに招いて無料で介護してあげたら私たちの真心(まごころ)が届いたのか介護された入居者は大変満足した。まず彼らの子どもが喜んだ。それから、入居者数は増加し始めました。現在、ハノイ近郊のソク・ソン(SocSon)県で5ヘクタールの第2施設を開設した。この施設は、日本式を取り入れて建設されている。」と明らかにしました。
高齢者ケアにおける専門性を高める為に、ゴックさんは、高齢者介護システムが発達している国々を回りました。
(テープ)
「私は、ドイツやアメリカに行きましたが、それらの国々での介護方法はベトナムや日本と違います。ですから、私は日本からの多くの経験を学び、同センターで適用させています。これまでに、3人の日本人が当センターに入居しましたが、二人は元気になってもう帰国しました。もう一人はまだここに残っています。これは私たちにとって成功したと思います。」
これまでに同センターが日本式看護・介護の手法を取り入れているのはベッド、食べさせ方、輸送のあり方、高齢者の調子に合わせた地区との調整、廊下の幅の拡張などです。
着物ショー
2012年12月始めに、ティエンドゥック高齢者介護センターで、日本の文化交流団が着物ショーを行いました。これは、ベトナム・日本国交樹立40周年へ向けての文化活動となりました。
さらに、このセンターはEPA日越経済連携協定に基づくベトナム人看護師・介護福祉士候補者受け入れスキームに基づく一定の役割が期待できる施設でもあります。これまでは「お年寄りは家で面倒見るのが当たり前」という時代でしたが、現代化されるなかで少しずつ変わりつつあるようです。