(VOVWORLD) - ベトナムでは、近年、大雨による洪水や、都市部での浸水被害が深刻になっています。また、山間部では鉄砲水も発生しており、都市部の排水処理能力も十分とは言えません。こうした状況を改善するため、ベトナムは日本や韓国と協力して、気候変動への対策と水資源の活用を進めています。
日本との協力
イエンサー排水処理施設(出典:JICAベトナム) |
日本との協力は、大きく分けて二つの柱があります。一つは、都市部の排水処理インフラの整備、もう一つは、山間部での防災対策です。
首都ハノイでは、日本のODA(政府開発援助)によって建設された、イエンサー排水処理施設が完成し、稼働を始めました。この施設は、一日に最大で27万立方メートルの排水を処理できる能力があり、ハノイの都市排水の半分以上を処理できると期待されています。
JICA(国際協力機構)ベトナム事務所の小林洋輔所長は次のように語りました。
(テープ)
小林洋輔所長 |
「こうした人を通じた協力に加えて、重要なのが資金を通じた協力であり、JICAはこれを通じてベトナムの市民の方々の日々の生活を改善するインフラの整備などに協力しています。現在実施中の案件は、無償資金協力という資金の返済を要しない協力5件、有償資金協力という資金の返済を要する協力15件を実施しています。直近の成果では、今年8月に東南アジア最大規模の下水処理施設となるイエンサ下水処理場が完成し、運営を開始しています」
また、ベトナム北部のソンラー省では、日本の技術を基にした砂防ダムが完成しました。このダムは、土石流の被害を減らす効果を発揮しています。JICAベトナム事務所の久保良友次長は、次のように語りました。
(テープ)
「先ほどご説明ありました通り、ベトナムにおいて初めての砂防ダムということで、現在、建設後に下流地域において土砂災害などが起こっていないことを考えると、すでに予防効果は現れているものと思います。今回の施設は、建設事業を通じて砂防ダムの技術基準を策定することも目的の一つでした。農業環境省(MAE)堤防管理・防災局は、全国で約100基の新たな砂防ダムの建設計画を策定しており、これはJICAのプロジェクトの成果を踏まえた全国展開への第一歩と考えています」
ソンラ省の日本式砂防ダム(出典:JICAベトナム) |
また、JICAベトナム事務所の平岡久和次長は、JICAのベトナムでの活動方針について次のように述べています。
(テープ)
「JICAは迅速な介入と長期的な協力を組み合わせて行っております。JICAは地すべり等の災害に対応して、先ほどお話があった砂防ダム技術を導入し、ベトナム初の砂防ダムを建設いたしました。また、都市の洪水と汚染に対抗するために、現在、東南アジア最大規模である、イエンサ下水処理場も支援しております」
韓国との協力
韓国との協力は、地方の排水処理能力の向上や、デジタル技術を活用した管理に重点が置かれています。
中部ダクラク省では、韓国政府の支援によって、排水システムと処理施設が整備されました。この施設は、一日におよそ1900立方メートルの排水を処理でき、およそ2900世帯が利用できるようになります。また、技術指導や研修も行われています。
ダクラク省とKOICAによる覚書の調印式 |
KOICA(韓国国際協力団)ベトナム事務所のイ・ビョンファ所長は次のように語りました。
(テープ)
「このプロジェクトは、住民の生活環境を改善し、安全な水資源の利用を確保します。都市の発展と住民の生活の質の向上に貢献したいと思います」
さらに、韓国水資源公社(K-water)は、ベトナムで二つのプロジェクトを計画しています。一つは、南部テイニン省での給水プロジェクト、もう一つは、北部フート省での排水処理施設の建設です。これらのプロジェクトは、長期的な視点での運営と、デジタル技術を活用した管理を目指しています。
今後の課題
ベトナム給排水協会のグエン・ヴィエト・アン副会長は、資金不足や、都市部での優先順位の低さ、そして計画の不備などを課題として指摘しています。その上で、排水処理計画の見直しや、省エネ技術の導入、そしてデジタル化による効率化が必要だと強調しました。
ベトナムは、気候変動対策と生活水準の向上を目指しており、日本と韓国は、それぞれの強みを生かして協力しています。今後は、これらの成功事例を広げ、計画から運営まで一貫性を持たせることで、気候変動に強い、持続可能な水資源管理を実現することが重要です。