山崎 こんにちは、山崎千佳子です。ソンさんとハノイ便りをお送りします。ソンさん、よろしくお願いします。
ソン お願いします。山崎さん、ベトナム中部にあるクアンチ省はご存じですか?
山崎 クアンチ省。初めて聞く省かもしれません。ベトナムはたくさん省がありますよね。
ソン そうですね。58の省と、ハノイやホーチミンなどの中央直轄市が5つあります。
山崎 クアンチ省には何があるんですか?
ソン ベトナムで1番多く戦跡、戦場の跡があります。戦時中、激しい戦いが行われたこの地方には、現在、戦争にかかわる430の遺跡が残されています。
山崎 430ですか?多いですね。
ソン はい。今日のハノイ便りは、クアンチ省の戦跡ツアーについてお伝えします。
山崎 クアンチ省は中部のどの辺にありますか?
ソン 北はクアンビン省、南はトゥアティエン・フエ省、西はラオスに接しています。東はベトナム東部海域、いわゆる、南シナ海に面しています。 省都は、ドンハ市です。
山崎 クアンチ省に戦跡が多い特別な理由があるんでしょうか?
ソン はい。クアンチ省にあるベンハイ川は、戦争中に南北を分裂する境界線となったんです。1954年のジュネーブ協定で、北緯17度線が北ベトナムと南ベトナムとの軍事境界線となりました。ベンハイ川が、ほぼその北緯17度線上にあったんです。
山崎 激戦地だったんですね。
ソン そうです。ジュネーブ協定で、この軍事境界線付近には、非武装中立地帯が設定されていましたが、そのほとんどがベンハイ川を中心とする幅4kmの場所でした。
山崎 クアンチ省にある戦跡は、どのようなものがありますか?
ソン まず、ベンハイ川に架かるヒエンルオン橋は有名な歴史遺跡です。今は新しい橋もありますが、その横に当時のまま銃弾の跡が残る古いヒエンルオン橋が残っています。他に、クアンチ城塞やビンモック地下トンネルなどがあります。
山崎 ビンモック地下トンネル?私、ホーチミンの郊外にあるクチトンネルは見学したことがあるんですが、同じようなトンネルですか?
ソン クチトンネルは、軍事的な要素が強いですけど、ビンモックトンネルは、生活拠点という感じです。ベトナム戦争の時に、周辺住民が爆撃を避けるために掘った物です。トンネルの長さは2キロで、3層構造になっているんです。
山崎 ええ?3階あるということですよね?すごいですね。
ソン そうなんです。地下12メートル、15メートル、23メートルのところに、トンネルがあるんです。中には、井戸や会議室、診療所、厨房などがあって、100世帯を一度に収容することができるということです。
山崎 クチトンネルもすごいと思いましたけど、3層構造とその生活空間が、住民の人の手だけで、できてしまうんですね。
ソン そうですね。クアンチ省には、この他、チュオンソン戦没者墓地があって、多くの人が訪れています。ベトナム戦争で犠牲となった人民軍の幹部と兵士が眠っています。面積は14万平方メートルで、ベトナム国内最大規模の墓地です。戦没者1万人以上の骨が安置されています。
山崎 今日のハノイ便りは、クアンチ省の戦跡ツアーについてお伝えしています。ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
山崎 今年、ベトナムは南部が解放されて40周年ということで、多くの元軍人が、昔の戦場や戦跡を巡るツアーに参加したようです。参加者は、訪問先で、ベトナムの独立のため犠牲になった人々をしのんだということです。ツアーに参加した人の話です。
(テープ)
「今日、国の独立と自由を勝ち取るため戦った場所を訪れることができて、感動しました。私たちは今のこの平和な時代でも、若い世代の手本となるような生活を送って行きたいと思います。そして、ベトナムのますますの発展が願いです。」
山崎 クアンチ省で戦った兵士の多くは、再びその地を訪れて、そこで眠る戦友に線香を手向けたいと思っているそうです。クアンチ省をたびたび訪れるというべトナム北部のビンフック省に住む元軍人のコメントです。
(テープ)
「クアンチのどこに行っても、泣いてしまいます。昔は貧しい地域でしたが、40年たった今は、昔の千倍ほども発展していると思います。解放当時は、このような立派な道はありませんでした。ここに来るたびに、クアンチの進化を実感しています。」
山崎 クアンチ省は戦争中、激戦地となり、多くの人がここで亡くなりました。戦跡をめぐるツアーは元軍人だけでなく、外国人観光客も引き付けているようです。
ソン これは単なる観光ではなくて、政治的、経済的、社会的にも大きな意味を持っています。過去と現在を仲立ちするものになっています。
山崎 クアンチ省文化スポーツ観光局のグエン・ヒュー・タン局長によりますと、今年は戦跡を巡るツアーを始めて10年目になるということですが、参加者は年々増加しているということです。タン局長の話です。
(テープ)
「このツアーは、ベトナム全土の元軍人の気持ちから生まれたものです。現在、平和な生活を送っている彼らはみな、元戦地で眠っている戦友や跡地を訪ねたいのです。かつての敵であったアメリカ兵の多くもこのツアーに参加したいと聞きます。実際に参加者もいます。また、このツアーは若い世代などが歴史を知るという点で教育的価値もあります。」
山崎 前半で、チュオンソン戦没者墓地をご紹介しましたが、そういったお墓も、クアンチ省には多いんですか?
ソン はい。共同墓地が72あります。その中で、チュオンソン戦没者墓地と国道9号線の共同墓地が国立の墓地となっています。
山崎 激戦地だったからお墓も多くて、かつての戦友をとむらう意味で訪れる人たちも多いんですね。平和の意味を改めて考えられる場所ですね。
ソン そうですね。では、おしまいに一曲お聴き頂きましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ベトナム中部クアンチ省の戦跡ツアーについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。