国立小児病院の特別教室

山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。今日は、ハノイにある国立小児病院でボランティアが行っている特別教室についてお伝えします。

山崎 小児病院での特別教室というと、入院している子供たち向けのものですか?

ソン そうです。この教室は、ボランティア団体と病院の協力によって、2011年から続いています。月曜から金曜まで週5日、入院中の子供たちが、楽しみながら算数や国語などを学んでいます。

国立小児病院の特別教室 - ảnh 1
特別教室の風景

山崎 長い間、入院している子供たちもいるんでしょうね。

ソン そうなんです。中には先天性の病気で7年もの間、入院生活が続いている子もいます。

山崎 学校に行く年齢で、ずっと病院にいる子供たちにとっては、そういう教室はもう心の底からの楽しみとなっているでしょうね。

ソン はい。病気で苦しむ子供たちも新しいことを学ぶことによって、気分転換というか、病気のつらさを紛らわすものとなっているようです。この教室は「希望教室」と呼ばれています。

(テープ)

「みなさん、こんにちは。ボランディアグループのトゥアンです。今日は双眼鏡を作ります。材料は、トイレットペーパーの芯と小さい輪ゴム、折り紙、ハサミ、両面テープ、クレヨンです。いいですか?」

「はい。」

山崎 教室として使われている50平方メートルの部屋の壁際には、長い本棚があって、その上には本、絵本、漫画、おもちゃ、ぬいぐるみがたくさん並んでいます。壁には、子供たちが願い事を書いた紙がたくさん貼ってあるそうです。

ソン 願い事は「私は治りたい」「僕はパパとママと一緒にいたい」などと書かれてあります。がん治療の副作用で髪が抜け落ちた子もいれば、ずっと点滴を付けている子もいます。

山崎 でも、みんな、笑顔で先生の話を夢中で聞いているんだそうです。

(テープ)

「まず、トイレットペーパーの芯を2つ用意します。準備できましたか?それから、折り紙です。好きな色でいいですよ。さあ、トイレットペーパーの芯を折り紙で巻きます。芯からはみ出た部分の折り紙はハサミで切ってください。まだ小さくてハサミが使えない人は、年上のお友達に手伝ってもらってくださいね。みんな、できたかな?そのあと、のりやテープを使って折り紙を芯に貼ってください。」

国立小児病院の特別教室 - ảnh 2
トゥアン先生の話を夢中で聞いている子供達

山崎 あっという間に双眼鏡を作ってしまった子もいたようですが、自分だけではなかなかうまくできなかった子もいたようです。先生の粘り強い教えとみんなで助け合って、ようやく全員の作品が完成しました。

ソン 少し恥ずかしがっている子もいましたが、みんな自分で作った双眼鏡を得意げに見せてくれました。

(テープ)

「私の名前はラン・アインです。12歳です。私の双眼鏡は色が紫と青で、クマと飛行機の模様をつけました。」

(テープ)

「ザー・リンです。5歳です。カントー市から来ました。腎臓の病気でここにいます。私のはピンクの双眼鏡で、お花も貼っています。」

ソン 重い病気と闘っている子供たちにとって、この教室は大きな励ましとなっています。 ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

山崎 今日のハノイ便りは、ハノイの国立小児病院で行われている特別教室についてお伝えしています。この教室は、月曜日から金曜日まで開かれているということですね。

ソン はい。午前と午後、行われています。子供たちは算数、国語、音楽、図工などを学びますが、学校の授業のように知識を身につけるというよりも、笑顔で過ごすことが1番の目標とされています。

山崎 いい目標ですね。笑顔は1番の薬になりますよね。先生はボランティアの人たちなんですよね?

ソン はい。自分の得意なものを教えてくれる一般の人や、学校の教師もいます。学生もいれば、有名な音楽家などもいるんですよ。子供たちの笑顔が、先生たちのエネルギーになっているそうです。

山崎 有名な音楽家というのは?

ソン ベトナムの有名な作曲家のファム・トゥエンさんです。以前のハノイ便りで「喜びの勝利の日にホーおじさんがいるようだ」という歌をご紹介しましたが、あの歌の作曲者です。80才を超えたトゥエンさんですが、愛や希望をテーマとした歌をここの子供たちに教えるのがとても楽しみなんだそうです。

山崎 もう1人、有名な人がボランティアで来ているそうですね?

ソン はい。2008年のミス・ユニバースベトナム大会でミス親善大使という賞を受賞したズオン・トゥイ・リンさんです。週に一回、この希望の教室で英語を教えています。

山崎 バラエティに富んだ先生方ですね。先ほど、子供たちに双眼鏡の作り方を教えていたファム・ヴァン・トゥアンさんの話です。

(テープ)

「希望の教室に初めて来た時、一人の小さい子がいました。2ヶ月後に訪ねた時も、その子がまだいたんです。治療が難しい病気のために、長期間の入院生活を送っているそうです。私は物質的な援助はできませんが、せめて楽しい時間を過ごしてもらいたいと思って、ここで創作(そうさく)活動を子供たちに教えることにしました。捨ててしまえばゴミになるトイレットペーパーや紙くずなどを使って、役立つものが作れるということを教えたいと思いました。」

山崎 希望の教室は重い病気と闘っている子供だけでなく、その親たちにとっても大きな励みとなっています。ベトナム北部バクザン省のチャン・クォック・フイさんは、もう2年も、娘さんがこの病院に入院しています。子供と一緒に病気と闘うというフイさんですが、希望の教室に参加する我が子の笑顔を見るたびに、元気になるそうです。自分と娘、2人だけじゃない、周りの多くの人がそばにいて支えてくれていることを感じているそうです。

国立小児病院の特別教室 - ảnh 3
トゥさんと入院中の子供による話

ソン 国立小児病院社会活動課のズオン・ティ・ミン・トゥ課長は、希望の教室は子供たちの治療にいい影響を与えているだけでなく、社会的な意義も大きいと話しています。

(テープ)

「ここでは、ハノイ市内の学校の先生やボランティアの人たちなど、社会からの支援を受けています。入院中の子供たちは学校に通うことはできませんが、希望の教室がその役割を十分果たしています。楽しく学んで、遊んでいます。教室に参加することで、子供たちは、医師や看護士以外の人と接することができて、自然な形で社会と関わりを持つことができています。」

ソン 私も小さい子供を持つ親としていろいろ考えさせられました。現実的に、親がずっと一緒にいて毎日勉強を教えることは難しいですし、いろいろな人とのふれあいは精神面でもとてもプラスになりますね。こういう特別教室は、本当にいいですね。

山崎 そうですね。日本でも「院内学級」という言葉があります。厚生労働省を中心としたプロジェクトでは、全ての病院に院内学級を作ることを目標としているそうですが、なかなか難しい状況のようです。日本でもベトナムでも「希望の教室」が少しずつでも増えていくといいですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ハノイの国立小児病院にある特別教室についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。


ご感想

他の情報