国境の里に響く収穫の喜び──クアンニン省の「新米祭り」

(VOVWORLD) - 中国との国境に接する北東部クアンニン省。山間の棚田が黄金色に色づく季節になりますと、この地に暮らす少数民族テイ族の人々は、代々受け継がれてきた「新米祭り」を執り行います。今日は、収穫への感謝と喜びに満ちた、この伝統行事をご紹介します。

クアンニン省ルックホン村。ここは人口の98%以上を少数民族が占める、ベトナムでも独特の文化が息づく地域です。毎年、稲が実りを迎えるこの時期、村々では「新米祭り」の準備が始まります。

この祭りは、一年間の労働の成果を天地や祖先に捧げ、家族の健康と繁栄を祈る、テイ族にとって大切な行事です。何世代にもわたって受け継がれてきたこの伝統は、2015年に国の無形文化遺産にも指定されました。

【料理コンテストの様子】

国境の里に響く収穫の喜び──クアンニン省の「新米祭り」 - ảnh 1ルックホン村のテイ族の伝統的な食卓に欠かせない「生姜の葉で炊き上げた緑色のもち米」。

祭りのハイライトの一つが、地域29の集落が腕を競う伝統料理のコンテストです。

会場となったルックナー集会所の広場には、色とりどりの料理が並びます。地鶏、カウニュックと呼ばれる豚バラ肉の蒸し煮、酸味の効いた魚料理、野生バナナの花のサラダ。そして何より目を引くのが、生姜の葉で炊き上げた鮮やかな緑色のもち米です。

ナータオ集落の代表、ルオン・ティ・カムさんに話を聞きました。

(テープ)

「私たちの集落では、昔ながらの伝統料理を大切に守ってきました。この新米の食卓を囲むことは、ただ料理を味わうだけではないんです。親戚や近所の人々が集まって、今年の収穫を振り返り、来年に向けての知恵を分かち合う。そういう大切な場なんです」

会場には地元の人々だけでなく、各地から訪れた観光客の姿もありました。ハノイから来たというハー・ティ・トゥイさんは、次のように話します。

(テープ)

「本当に驚きました。各集落に、こんなに特色ある食材があるとは知りませんでした。もち米の色の美しさ、香り、そしてふっくらとした食感。どの食卓にも登場するカウニュックは、とても手が込んでいて。周りの観光客の皆さんも、みんな夢中になって見入っていましたよ」

【新米祭りの儀式】

国境の里に響く収穫の喜び──クアンニン省の「新米祭り」 - ảnh 2ルックホン村ドンロン集落の人々が作った
「新米の膳」がコンテストで優勝しました。

料理コンテストと並行して行われるのが、伝統的な新米祭りの儀式です。

集会所では、村の長老たちが中心となって、厳かに儀式が進められます。供え物として、新しく収穫した米で炊いたご飯、それに地酒、果物などが祭壇に並べられます。

ハロン大学で民族文化を研究している副学長のファン・ティ・フエさんは、この祭りの意義について次のように説明します。

(テープ)

「新米祭りは、テイ族の文化の核心とも言える行事なんです。興味深いのは、これがテイ族だけのものではなくなってきていることです。今では同じ地域に住むザオ族やサンチー族の人々も参加して、民族を超えた交流の場になっています。観光客に文化を発信する機会であると同時に、若い世代に自分たちのルーツを伝える、とても大切な場でもあるんです」

【黄金の季節フェスティバル】

新米祭りは、10月末から11月末にかけて開催される「黄金の季節フェスティバル」の中核をなすイベントです。

今年のフェスティバルでは、文化行事だけでなく、さまざまな体験プログラムが用意されています。名勝に指定された美しい棚田でのフォトスポット巡り、実際に稲刈りを体験できるプログラム。パラグライダーで黄金色の棚田を空から眺める「黄金の大地を空から」というアクティビティも人気です。

国境の里に響く収穫の喜び──クアンニン省の「新米祭り」 - ảnh 3テイ族、ザオ族、サンチー族など、少数民族の
伝統料理に興味津々の観光客。

また、「クアンニン省の屋根」と呼ばれるカオシエム山への登山、そして注目を集めているのが、「村に泊まり、村人と食卓を囲み、農作業を体験する」という滞在型のプログラムです。これは都市部から訪れる人々に、山村の暮らしを肌で感じてもらおうという取り組みです。

ルックホン村の人民委員会委員長、ヴィー・ティエン・ヴオンさんは、このフェスティバルに大きな期待を寄せています。

(テープ)

「私たちの目標は、単に観光客を増やすことではありません。各民族が大切に守ってきた文化の価値を広く知ってもらい、それが地域の誇りとなり、経済的な発展にもつながる。そういう好循環を作りたいんです」

実際、ルックホン村では観光客の受け入れに向けて、着実に準備を進めています。道路などのインフラ整備、地元の家庭が運営するホームステイの拡充、環境に配慮したエコリゾートやキャンプ場の開発。

そして興味深いのが、「すべての住民が観光ガイド」というスローガンのもと、地域ぐるみで観光客を迎える体制づくりを進めていることです。

2025年、ルックホン村は約3万5千人の観光客受け入れを目標に掲げています。この国境の村は今、東北部におけるコミュニティツーリズムの先進モデルを目指しています。

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