干ばつが続いている南部メコンデルタ地域
この数年間、南部メコンデルタ地域では、大規模な洪水があまり発生しなかったことから、水産物資源の枯渇、土壌が不毛な状態になり、干ばつと塩害などの自然災害が頻繁に起こっています。自然災害の影響を抑制させる為に、現地農民は、農業生産構造転換を加速させています。
昔から、南部メコンデルタ地域は、洪水がもたらす恵みで形成されてきました。かつて、この地域は、メコン川の水を貯水する「袋」の一つとして見なされました。適度な洪水が発生すると、田畑に肥沃なシルトを運んできてくれる恵みがあり、水産物が豊富になり、現地住民の生活が豊かになってきました。しかし、現在、気候変動の影響、それに上流における水力発電所が建設されたことにより、メコン川の下流に深刻な影響をもたらしています。こうした状況を前に、南部メコンデルタ地域の住民は、職業を転換することにしました。数十年にわたって、漁獲に従事してきたド・バン・リエットさんは、次のように明らかにしました。
(テープ)
「将来的にみて、漁業は発展できないでしょう。現在、洪水は小規模過ぎるため、ウナギを飼育せざるを得ません。国家は、水牛や牛の飼育に資金を提供してくれたんです。」
この先、最も重要な方策は、乾季と塩害に適応できる植物の栽培、あるいは、非農業サービスの発展、農業再構築などを行うことです。カントー大学・環境天然資源科のズオン・バン・ニ博士は次のように明らかにしました。
(テープ)
「メコン川の上流と支流地域における水力発電ダムが建設された為、川の肥沃な土壌が深刻に減ってしまいました。この数年間のメコン川の肥沃な土壌が以前と比べ、半減しています。将来、水力発電のダムが増設されれば、平野部への肥沃な土壌が少なくなる恐れがあります。」
農業部門は現地農民を助ける為に、干ばつや塩害に対応できる様々な方策を実現しています。また、各地方は、気候変動に対抗する為に、調整池や放水路、下水道施設などの建設を主体的に行いました。また、農業農村開発省は、大規模な田畑での農作業、稲作の栽培面積の再構築、水利システムの完備、稲種子の改良などに関する政策をとっており、一定の効果を遂げています。また、メコン川上流地域にある各国と緊密に連携して、情報交換を強化して、メコン川の水資源を主体的に管理し、持続的かつ効果的に使用するとしています。