英仏独、対イラン制裁復活の手続き通知 核合意は崩壊の危機
(VOVWORLD) - 安保理では「対イラン制裁の解除継続」をめぐる決議案が議論される見通しですが、ロシアや中国が制裁解除を支持したとしても、拒否権を持つ英仏が同意しない限り制裁は復活することになります。
イラン・マルキャズィー州にあるアラク重水研究炉(写真:The Times of Israel/TTXVN) |
イラン核合意の当事国であるイギリス、フランス、ドイツの3カ国は28日、イランのウラン濃縮活動などが合意違反に当たるとして、国連安全保障理事会に対し対イラン制裁の復活に向けた手続きを開始すると通知しました。安保理関係者が明らかにしたものです。イランに圧力をかけて核協議を前進させる狙いがありますが、通知後30日間の審議期間に進展がなければ、制裁が自動的に復活することになり、核合意は崩壊の危機に直面します。
イラン核合意は2015年、安保理の常任理事国(米英仏中露)とドイツ、イランの間で結ばれました。イランが核開発を制限する代わりに、国連や米欧の制裁を緩和する内容で、当事国が合意違反を理由に制裁を復活させる「スナップバック」と呼ばれる仕組みも盛り込まれていました。
しかし、2017年に発足した第1次トランプ政権は強硬姿勢をとり、2018年に核合意から一方的に離脱しました。これに反発したイランは段階的に合意から逸脱し、高濃縮ウランの生産を再開しました。
その後、英仏独はアメリカには同調せず、中露と共に合意の枠組みを維持しようと努めてきました。今年1月に発足した第2次トランプ政権はイランとの新たな合意を目指して協議を行いましたが、交渉は停滞しています。一方で、イランのウラン濃縮が核兵器に転用可能な水準に近づいていることへの危機感が米欧で高まっていました。
今年6月には、イスラエルとアメリカがイランの核施設を攻撃し、主要なウラン濃縮施設が被害を受けました。ただ、イランが高濃縮ウランや設備を他の場所に移した可能性も指摘されており、被害の実態は不明です。
一連の事態を受け、英仏独はイランと独自に核協議を開いたほか、アメリカとの協議を進展させるようイランに促しました。しかし進展はなく、今年10月18日までに「スナップバック」が発動されなければ失効することもあり、8月に英仏独は「8月末までに十分な解決策が得られなければ発動する」と警告していました。
今後、安保理では「対イラン制裁の解除継続」をめぐる決議案が議論される見通しですが、ロシアや中国が制裁解除を支持したとしても、拒否権を持つ英仏が同意しない限り制裁は復活することになります。(毎日新聞)