「トゥイちゃんのメヌェット」:音楽で表現されるベトナム女性の魂と美

(VOVWORLD) - ベトナム美術博物館は2024年8月8日、イギリス人作曲家ポール・ゼッター氏から音楽作品「トゥイちゃんのメヌェット」の寄贈を受けました。この曲は、ゼッター氏が2000年にハノイの同博物館を訪れた際、ベトナムの著名画家チャン・ヴァン・カン(1910-1994)の絵画「トゥイちゃん」に触発されて作曲したものです。
「トゥイちゃんのメヌェット」:音楽で表現されるベトナム女性の魂と美 - ảnh 1著名画家チャン・ヴァン・カンの絵画「トゥイちゃん」

(音楽:「トゥイちゃんのメヌェット」)

「トゥイちゃん」は1943年にハノイで制作された油彩画で、画家の8歳の姪グエン・ミン・トゥイの半身像を描いています。ベトナム現代絵画を代表する肖像画の一つとして評価が高く、2013年には国宝に指定されました。

この作品では、トゥイちゃんの大きく丸い黒い瞳、わずかに寄った唇、膨らんだ頬、斜めに分かれた髪が特徴的で、少女は鑑賞者に真っ直ぐ視線を向けています。絵の左側に座る少女は、膝の上で両手を重ね、後ろに流れ落ちる髪の毛が襟に触れています。落ち着いた茶色の籐椅子の優雅な曲線が、絵の構図のバランスを保っています。明るい服装は、薄い黄色の背景壁とピンクと白のストライプのカーテンによく調和しています。

文化遺産局の記録によりますと、画家チャン・ヴァン・カンはこの作品で20世紀初頭のヨーロッパ的な典型的な構図を採用しています。チャン・ヴァン・カンの独特の様式は、西洋的なフォルムに東洋の精神性を融合させています。油彩画という素材は、写実主義的芸術様式の典型例であり、20世紀初頭のベトナム肖像画ジャンルを代表するものでもあります。「トゥイちゃん」は、1945年8月革命前のベトナム社会の一面を反映した作品の一つです。

2004年に絵を修復したオーストラリア人専門家キャロライン・フライ氏は、この絵の美しさに圧倒されたと述べています。「状態は良くありませんでしたが、それでも魅力的で、まさに『ベトナムのモナ・リザ』と呼んでも過言ではありません」と語りました。イギリス人作曲家のポール・ゼッター氏は、2000年にこの絵を見てから「ひと目で虜になった」と語り、「自分の子供時代を見ているようで、絵の素朴で単純な美しさに心を打たれて涙を流した」と述べています。ゼッター氏のこの感想は、「トゥイちゃんのメヌェット」の誕生から発したものです。メヌェットとはフランスに起こり17、8世紀ヨーロッパの宮廷で流行した典雅な舞踏および舞曲を指し、のちには器楽曲の楽章にも用いられました。

「トゥイちゃんのメヌェット」について、ベトナム美術博物館のグエン・アイン・ミン館長は次のように語りました。

(テープ)

「当館が音楽作品を受け入れるのは今回が初めてです。ゼッター氏は『トゥイちゃん』の純真な眼差しに深く感銘を受け、即座にこの曲を作曲されました。我々はこの曲を館のデジタルプラットフォームやコンサートプログラムで活用し、新たなブランド・アイデンティティとして位置付けていく予定です。」

「トゥイちゃんのメヌェット」:音楽で表現されるベトナム女性の魂と美 - ảnh 2ゼッター氏に花束を贈っているミン館長

「トゥイちゃん」の絵で最も印象的なのは、鑑賞者を真っ直ぐに見つめる大きな黒い瞳です。やや臆病な様子ながら、その眼差しには純真さと無邪気さが溢れています。画家の印象的な筆致は、ロマンチックかつ繊細に人物の内面の深さを表現しています。ゼッター氏は次のように述べています。

(テープ)

「トゥイさんが7月お亡くなりになったことは非常に残念です。しかし、トゥイさんと『トゥイちゃん』の作品は、ベトナム女性の典型的な美しさとともに永遠に生き続けると信じています。ベトナムの女性は美しく、忍耐強く、勇敢で、聡明で、自信に満ちています」

「トゥイちゃんのメヌェット」は人民芸術家ゴー・ホアン・クアン氏によって室内楽用に編曲され、ベトナム美術博物館で初演されました。ベトナム美術協会のルオン・スアン・ドアン会長は次のように評しています。

(テープ)

「この曲は、『トゥイちゃん』を目にする前に心で感じたものを表現しているように思います。ベトナム女性の魂と美しさがこの音楽作品に見事に表現されています。ベトナムの美術界は深く感動し、ゼッター氏の作曲に心から感謝しています」

(音楽:「トゥイちゃんのメヌェット」)

「トゥイちゃんのメヌェット」は、国宝「トゥイちゃん」の魅力を一層引き立てる貴重な贈り物となり、同時にベトナム女性の魂を音楽で鮮やかに描き出す作品となったといえるでしょう。

ご感想

他の情報