新春に文字を求める慣わし ― ベトナムに息づく書の文化

(VOVWORLD) - 旧正月テトを迎えたベトナムでは今、街のあちこちで書家が筆を手に座り、訪れる人々に文字を書き贈る光景が見られます。「シン・チュー」、日本語で「字請い」とも言うべきこの新年の慣わしは、ベトナムの人々が長年大切にしてきた伝統文化のひとつです。
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古来よりベトナムでは、文字は単なるコミュニケーションの手段ではなく、学識や人格、道義の象徴とされてきました。新春に書家から文字をいただくことは、知識への敬意を示すとともに、新しい年への願いを託す行為として、幾世代にもわたって受け継がれてきました。

いただく文字にはそれぞれ深い意味があります。「福」「禄」「寿」「安」は豊かで穏やかな暮らしへの願いを、「智」「忍」「心」「孝」は人格を磨き、家族や社会への責任を果たすことの大切さを表しています。一つひとつの文字が、道徳的なメッセージであり、文化の象徴となっているのです。

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ハノイ市ユネスコ書道クラブの副会長、ホアン・アン・ディエップさんは、「文字をいただくことは、家族みんなに喜びと安らぎと健康をもたらします。子どもたちへの学びの大切さを込めた文字を求める親御さんも多く、また若い世代が祖父母のために健康や長寿を表す文字を求める姿もよく見られます」と話しています。

この慣わしは、現代においてもますます意味を増しています。社会が急速に発展し、日々の生活が慌ただしくなる中で、書家の前に静かに立ち、柔らかな筆運びを目で追い、墨の香りに包まれるひとときは、人々が立ち止まって自分自身の内なる声に耳を傾ける貴重な時間となっています。

家に飾られた一枚の赤い紙は、単なる正月の飾りではありません。伝統を守り、心を育てることへの思いを新たにさせてくれる、春の贈りものなのです。

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