ベトナム初「フォー博物館」ホーチミン市にオープン

(VOVWORLD) - ベトナムの国民食として知られる麺料理「フォー」。その歴史と文化を伝える博物館が今月15日、ホーチミン市にオープンしました。ベトナム初の民間料理博物館で、国内外の観光客が、路上の屋台から世界の食卓へと広がった100年以上の歩みを体験できる新しいスポットとして注目されています。
ベトナム初「フォー博物館」ホーチミン市にオープン - ảnh 1「フォー博物館」

100年前、路上の屋台から始まった

フォーの歴史は100年以上前にさかのぼります。発祥については諸説ありますが、20世紀初頭、ベトナム北部のハノイやナムディン省で生まれたとされています。

当時のベトナムはフランスの植民地でした。フランス人が牛肉を食べる習慣を持ち込んだことで、それまであまり食べられていなかった牛肉料理が広まりました。牛骨でスープをとり、米の麺と合わせたのがフォーの始まりだといわれています。

最初は路上の屋台で売られていました。天秤棒の両端に鍋と食材を吊るし、担いで売り歩く「フォー売り」の姿が、当時のハノイの街角でよく見られたそうです。

朝早くから「フォー、フォー」という掛け声が響き、人々は屋台に集まって朝食にフォーを食べました。手軽で栄養があり、体が温まるこの料理は、すぐに庶民の間で人気となりました。

フォーにも地域による違いが生まれました。北部、特にハノイのフォーは、シンプルで上品な味わいが特徴です。透き通った澄んだスープに、ネギと生姜だけをトッピング。余計なものを加えず、牛骨の旨味を最大限に引き出したスープの味を楽しみます。

一方、南部のホーチミン市のフォーは、もっとにぎやかです。モヤシやハーブ、ライムをたっぷり添え、甘めのタレやチリソースで自分好みの味に調整します。スープも少し甘みがあるのが特徴です。

中部には中部の味があり、ベトナム国内だけでも、地域によって様々なフォーが楽しめるのです。

ベトナム初「フォー博物館」ホーチミン市にオープン - ảnh 2「フォー博物館」のオープン式典

食文化遺産を次世代へ

フォー博物館は、ホーチミン市文化スポーツ局の許可を得て運営されています。ベトナムの食文化遺産の価値を保存し、発展させ、国内外に紹介することを目的としています。

博物館の広さは約800平方メートル。3階建てで、見学と食事を組み合わせた体験型の施設です。所要時間は約60分から75分で、一貫したストーリーに沿って館内を巡る仕組みになっています。

共同創設者のグエン・クエ・アインさんは次のように語ります。

「私たちが対象としているのは、食文化と文化遺産の体験に強い関心を持つお客様です。特にホーチミン市を訪れて、質の高い文化体験を求める外国人観光客に楽しんでいただけるサービスを提供しています」

100年の物語を映像と展示で

見学ルートは、歴史的背景や文化、社会生活を通じて、フォーが世界へと広がっていく過程を追います。

ベトナム初「フォー博物館」ホーチミン市にオープン - ảnh 3「フォー博物館」館内

2階では、100年以上にわたるフォーの歴史が映像で紹介されています。路上の屋台から始まり、ベトナムの国民食として定着し、やがて世界中で愛される料理になるまでの歩みが、生き生きと描かれています。

3階には200点以上の実物資料や芸術作品が展示されています。北部、中部、南部それぞれのフォー文化の違いや、国の歴史と密接に結びついた料理の変遷を知ることができます。

展示物の中には、若手アーティストが制作したユニークな作品も含まれています。レゴや毛糸で作られた作品もあり、伝統と現代が融合した展示になっています。

昔の天秤棒で担いだフォー屋台、「フォー」という文字が初めて記録された辞書のページ、石臼や鍋、八角などの調理道具まで、細かく再現されています。

館長のレ・ニャット・タインさんは、博物館を設立した思いを次のように語ります。

「日本にはラーメン博物館があります。それを知って、なぜ私たちのフォーにふさわしい博物館がないのかと考えました。フォーを愛する人々に、この国民食についてより深く知ってもらいたいのです」

タイン館長は、毎年フォーやベトナムの食文化に関する新たなテーマを研究し、展示内容を更新していく計画だと話しています。

五感で楽しむフォー体験

ベトナム初「フォー博物館」ホーチミン市にオープン - ảnh 4

2階と3階での見学を終えると、1階でフォーを味わうことができます。

ここは単なる食堂ではありません。大型スクリーンが設置された多次元空間で、映像と音響が作り出す特別な雰囲気の中でフォーを楽しめるのです。

厨房はオープンキッチン方式になっていて、職人が米麺を作り、手作りでフォーを調理する全工程を見ることができます。

提供されるフォーは本格的です。米麺、レアの牛肉、バラ肉、すね肉、筋肉、肉団子に、リブ肉の小鉢が添えられています。

訪れたキム・トゥエンさんは次のように感想を述べました。

「文化的な物語がとても自然に織り込まれていて、フォーがどのように発展してきたのかがよく分かりました。フォーの器はとても大きく、スープは澄んでいて、麺は透明です。南部と北部、両方の味わいがあります。文化を学びながら、本物のベトナムのフォーを味わえました」

新たな観光スポットとして期待

博物館は毎日、朝8時から夜9時まで営業しています。見学とフォーの試食、記念品がセットになったチケットを販売していて、1日におよそ1,500人から2,000人を受け入れる能力があります。

体験型観光がますます重視される中、フォー博物館はホーチミン市の新たな文化・観光スポットとして位置づけられています。

歴史、食文化、芸術を融合させたこの施設は、国内外の観光客を引き付けるだけでなく、ベトナムの食文化遺産を次世代に伝える役割も担っています。

路上の屋台から始まり、いまや世界中で愛されるフォー。その歩みをたどる博物館が、ベトナムの新しい魅力として注目を集めています。

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