ベトナムの首都ハノイでは、数年前に始まった「フックタン・パブリックアート・プロジェクト」により、これまで見過ごされてきたホン川沿いの一角が、市内で最もユニークな文化スペースの一つへと生まれ変わりました。このプロジェクトは、ロンビエン橋のたもとに位置する居住地の景観を一変させただけでなく、住民の環境や生活空間に対する意識をも大きく変えています。
ロンビエン橋のたもと、ホン川沿いに広がる約500メートルのエリアは、かつてゴミの集積場となっており、誰も立ち寄ろうとしない場所でした。しかし現在では、多くの人々を惹きつけるユニークな文化的創造の場へと変貌を遂げています。
居住地と川沿いの遊歩道を隔てる、長い年月を経て色あせた壁には、国内外の芸術家16人による16のアート作品が展示されています。さまざまな素材を用いて制作されたこれらの作品が、通りの景観を大きく変えました。
若手芸術家のカン・ヴァン・アンさんは、「並行する反射」と題した作品で、ホン川沿いに暮らす人々の水害対策用のボートを制作しました。そこには5000枚もの鏡の破片が貼り付けられており、ロンビエン橋の姿を美しく映し出しています。また、ヴオン・ヴァン・タオさんは「割れた歴史」という作品で、直径30センチの陶器の皿36枚を配置し、川沿いにある歴史あるバッチャン陶芸村のストーリーを表現しました。
美術研究家でビジュアルアーティストのチャン・ハウ・イエン・テーさんは、「名声の壁」という作品を通じて、都市開発の過程で姿を消していった民家の扉の記憶を呼び起こしています。
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「このプロジェクトは、アーティストが行政や住民と協力し、かつては非常に暗く不衛生だった場所を生まれ変わらせる取り組みです。私たちアーティストは、この場所がハノイ市の中心部に位置しているものの、見過ごされていると感じていました。通常、パブリックアートはあらかじめきれいにされた壁に描かれますが、今回のプロジェクトはその逆のアプローチを取りました。アート作品がフックタン居住地に現れたことで、空間自体が以前よりも清潔になり、地域コミュニティにもこの場所をきれいに保とうという意識が芽生えました」
フックタン・パブリックアート・プロジェクトは、フックタンという土地の文化や歴史、ホン川、さらにはハノイ全体のストーリーを伝えています。特筆すべきは、多くの作品がペットボトル、タイヤ、ドラム缶、竹製の鶏かごといったリサイクル素材から作られている点です。これらは環境に配慮されているだけでなく、独特の個性と独創性を生み出しています。
プロジェクトのキュレーターを務める芸術家のグエン・ザ・ソンさんは、鉄くずや鏡面ステンレスを使用し、ホン川の渡し場で見られる物売りや労働者たちの姿を表現したインスタレーション作品を手がけました。ソンさんは次のように述べています。
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「このプロジェクトによって、住民の皆さんが自分たちの暮らす場所に誇りを持てるようになりました。その結果、自分たちで空間を整え、環境美化に努める意識が高まっています。また、居住地の景観改善にも貢献しており、作品に取り付けられたライトの光が、このエリア一帯を明るく照らしています」
夕方や週末になると、多くの住民がこのフックタンのコミュニティ・アート通りを訪れ、憩いのひとときを過ごしています。プロジェクトは今や、地域の人々の生活に自然と溶け込んでいます。一方、観光客にとっても、美術館に飾られたものではなく、コミュニティの中で『生きている』アートを直接鑑賞できる場所となっています。また、この場所から列車の音や日常の喧騒を感じながらロンビエン橋を眺めるのも、観光客に好評です。フックタン地区の取り組みは、地域の文化的価値が還元されることで、都市空間が劇的に変化し得ることを示しています。
フックタン・パブリックアート・プロジェクトは、コミュニティに清潔で緑豊かな空間をもたらしただけでなく、連帯と創造性の象徴でもあります。これは、地域の人々が手を取り合うことで、素晴らしい変化が現実のものとなることを証明しています。この空間は都市の景観美化に寄与するだけでなく、市民や観光客が都市の中に息づく文化・芸術遺産に触れる機会を提供しています。
