2026年初めからハロン湾沿いのイベントで
観光客に披露されている。
体験型観光商品「ハロン・バーヴァック船―遺産の帆」が、ハロン湾沿岸で正式に運行を始めました。「バーヴァック」とは「三枚の板」という意味。底板1枚と両側の側板2枚、計3枚の板を組み合わせてつくる、北部沿岸の伝統的な船です。コウモリの翼のような形の帆を掲げ、逆風でも進み、波を切り、安定した航行ができることで知られています。クアンニン省クアンイエン地方と深く結びついた、この土地ならではの船です。
ツアーは毎日午前8時から午後5時まで運行されます。出発地点は、ホンガイ地区、ハロン第一市場に近い水上旅客運輸会社の乗り場。そこからハロン湾を進み、クアンニン省博物館・図書館の一帯、詩の橋から博物館にかけての区間を巡って、再び出発地点に戻る行程です。いち早く体験したチュオン・クオック・フンさんは、次ぎのように話します。
(録音)
「船に乗って最初に印象に残ったのは、船頭さんの伝統的な衣装でした。帆の古典的な色合いに加えて、お茶とお菓子も味わうことができました。デザインから食事まで、細部にまでこだわりが感じられ、かつてのハロンの暮らしを、本物として味わえる旅になりました。」
レ・ドゥック・チャン氏が家族とともに
観光客向けの6艘を製作。
長年ハロン湾とともに歩んできた人々にとって、コウモリの翼のような帆の姿は、数々の記憶を呼び覚まします。バーヴァック船は、海の上の「家」として、クアンニン省の漁民の暮らしを何百年にもわたって支えてきました。938年のバクダン(白藤)江の戦いでもこの船が使われ、かつては建造物の資材運搬にも用いられたといいます。20世紀半ば以降は、茶色や赤色の帆をまとったバーヴァック船が、平穏なハロンの象徴として、多くの国際的な写真家のレンズを通じて、名作となる写真や映像を生み出してきました。
このバーヴァック船の魂を今に伝えるのが、造船の伝統を17代にわたって受け継ぐ、ハナム島地区の人間国宝、レ・ドゥック・チャンさんです。近代的な船が帆船に取って代わる中、一時は家業である木造船づくりが途絶える危機に直面したといいます。バーヴァック船を一艘つくるには、チャンさんと7、8人の職人からなる一団でも、最低一ヶ月はかかります。
(録音)
「この船が、いつか途絶えてしまうのではないかと、ずっと心を痛めてきました。しかし幸いにも、省や観光関連の企業から、新造の支援を受けることができました。これこそが、私にとって最大の成果です。ご先祖様や、昔の先人たちに、自分の務めを果たせたと報告できる思いです。」
60分間の観光体験。
現在、チャンさんの家族が新たに造ったバーヴァック船は6隻。観光客の利用に供されています。この体験商品は、クアンニン水上旅客運輸会社とベトナム観光船社の共同運営によるものです。ベトナム観光船社のグエン・タット・ヒエウ社長は、次のように話します。
(録音)
「クアンニン省は観光が発展した地域で、近代的なクルーズ船も充実しており、観光客もさまざまな体験をしてきました。しかし、精神文化や伝統に関わる商品は、まだ不足しています。私たちの目標は、バーヴァック船の復活を通じて、地域の伝統を守り、保存し、称えていくことです。志を持つ職人の方々が、この技を続けていける環境を支え、それを通じてクアンニン省の美しい姿を、観光客に広めていきたいと考えています。」
茶色や赤色の帆をまとったバーヴァック船は、懐かしさに満ちた色合いで、かつてのハロンの姿を今に伝えています。ハロン湾を航行するバーヴァック船に加え、そのミニチュア模型も、独特なお土産として、観光客に人気を集めつつあります。
地元の文化観光部門は、さらに先を見据え、バーヴァック船のヨットレースの開催や、観光客自らが帆を操る体験なども検討しています。記憶の中にしか残っていないと思われていた遺産を、国際的な規模の文化・スポーツイベントへと育てていく構想です。世界遺産の壮大な景観と、素朴な帆船の記憶。この二つが重なり合うとき、ハロン湾は、また新たな表情を見せてくれそうです。
