居住の場であるとともに、
文化・信仰生活の中心でもある。
子どもや孫が結婚するたびに1区画ずつ増築され、何世代にもわたって、文字通り、家はどんどん長くなっていきます。家が長ければ長いほど、その一族の繁栄を表すとされています。また、母系社会であるエデ族にとって長屋は単なる住まいではなく、家族の絆を結び、神霊や祖先とつながる、文化と信仰の中心でもあります。この長屋に新たに移り住む際には、「新居入り儀礼」と呼ばれる伝統的な祭礼が執り行われます。
(銅鑼の音)
新居入り儀礼は、長屋が完成した後、吉日を選んで行われます。芳醇な醸造酒が仕込まれ、供物の準備が整うと、遠近の親族が一堂に集まります。そして、クナーと呼ばれる銅鑼の響きとともに、儀礼が始まります。
儀礼はおもに二つの祭祀から成ります。まずは神霊と祖先への祭祀、そして家主への健康祈願です。
儀礼はまず、家の東側の窓のところで始まります。エデ族の人々にとって東は、太陽の光を迎える方角。生命と新たな始まりを象徴する、特別な方角です。
供物が並べられ、銅鑼が鳴り響く中、祈祷師が祈りを唱え、山野・天地を司る神々「ヤン」と先祖の霊を招きます。新居の完成を告げ、家族が末永く守られるよう願うのです。その祈りの言葉には、こんな一節があります。
録音 (祈りの言葉 エデ語)
「ヤンよ、子孫が新たな住処を得て、家と炉を持つに至ったことを、ご先祖様にご報告申し上げます。どうか皆様お越しいただき、子孫が健やかで、衣食に事欠かず、集落が団結し、安らかであるようお守りください」
さまざまなリズムを刻む銅鑼群。
続いて行われるのが、儀礼の核心とも言える「家主への健康祈願」です。家主夫妻は東の窓に向かって供物台の前に座り、祈祷師の祈りに臨みます。祈祷師は祈りを唱えた後、酒甕のそばへと移り、竹管を手渡して祝福の言葉を読み上げます。そして銅の腕輪をはめることで、健康と豊かさ、安定した暮らしを祈り願います。
この祭祀について、地元のイ・シオン・エバンさんは次のように話します。
(テープ)
「新居に移る際は、慣習に従って健康祈願の祭祀を行わなければなりません。家主が常に健康で元気でいられるよう祈るためです。新居ができたら家主の健康を祝う、それがエデ族の慣習なのです」
儀礼を通じて鳴り響く銅鑼の音色は、祭祀の進行に合わせてリズムを変えます。集落の演奏者イ・ヌット・クブオルさんが、その決まりを教えてくれました。
(テープ)
「祭祀の前にまず銅鑼を打ちます。最初は緩やかなリズムで、やがて速いリズムへと移ります。祈祷師の祈りが終わりに近づくと、いったん止まります。腕輪をはめる儀式の間は打たず、それが終わって酒を酌み交わすと、また打ち始め、儀礼が終わるまで続きます」
新居入り儀礼は今も、エデ族の暮らしの中に息づいています。都市化が進み、さまざまな文化が交わるなかにあっても、この儀礼を守り続けることが、エデ族の豊かな伝統を未来へつなぐ力となっています。
また近年は、こうした儀礼をコミュニティツーリズムや体験型観光に活かす取り組みも広がっています。エデ族の長屋は、過去の記憶の中だけでなく、テイグエン高原の今日の暮らしの中に、確かに生き続けています。
