森に自生する木の繊維から漉かれるこの紙は、幾世代もの村の魂を宿す一枚として大切にされてきました。北部フート省の山あいの村では今、年配者が伝統を守り、若者が新しい発想でその未来を切り開こうとしています。
録音(儀式の音):
お供え物の前で、ザン紙がさまざまな形に切られ、丁寧に並べられていきます。結婚式のような祝いごとから葬儀、そして重要な祭祀まで、モン族の精神的な行事にザン紙は欠かせません。人々の祈りと平安への願いを精霊の世界へ届ける、大切な役割を担ってきました。住民のスン・イ・ゾーさんです。
録音(スン・イ・ゾーさん)
「私たちはモン族の風習のためにザン紙を使います。旧正月や、亡くなった方の命日などです。故人にはこの紙で祈りを捧げ、見送るのです。」
録音(紙漉きの様子)
ファン・ア・チュオンさん
かつては村のどこでも紙を漉く女性の姿が見られましたが、今、この技術を守るのはわずか4世帯ほどです。それでもこの4世帯は、自分たちの分だけでなく、近所の家々にも紙を分け合っています。村に代々受け継がれてきたつながりを、共に守ろうとする姿です。71歳のファン・イ・シーさんも、その一人です。
録音(シーさん)
「ザン木を刈り取り、皮をむいて、灰と一緒に1〜2日茹でて柔らかくします。その後、水に1〜2週間浸し、繊維を叩いて細かくし、水と混ぜて漉し布に流します。天日に1〜2日干せば、あとは剥がすだけで紙になります。」
若者ファン・ア・チュオンさんにとって、ザン紙は幼い頃の記憶そのものです。正月前、父と一緒に祭壇を新しい紙に貼り替えた日々が、今も心に残っています。
録音(チュオンさん)
「正月が近づくと、父はザン紙を切って祭壇を作ります。大晦日の夜に貼り替え、雄鶏の血を少しつけて供えるんです。」
今、ザン紙は壁紙やノート、土産物など、暮らしの中でより幅広く使われるようになりました。花や葉を添える工夫も生まれています。チュオンさんは、この文化を訪れる旅行者にも伝えたいと話します。
録音(チュオンさん)
「観光客にも紙作りの工程を知ってもらい、僕たちの文化を紹介したい。技術を体験しながら、民族の文化を知ってもらいたいんです。」
一枚のザン紙には、モン族の祈りと暮らしが今も息づいています。そしてそれは今、村を訪れる旅人たちにとっても、身近な文化への入り口となっています。
