チャム語で「ギンロン・ラヤ」。ショウガの根の形をした、手づくりのお菓子です。祭りには欠かせず、特に、この民族にとって神聖な「カテ祭り」には、必ず用意されます。夫婦の変わらぬ愛と、地域の絆の象徴でもあります。
(チャム族の民族音楽)
つくり方には、手間がかかります。もち米の粉と卵、砂糖を練り、一つひとつ手で形をつくります。伝統の形はショウガですが、最近は、魚やサンゴなど、新しい形も生まれています。油で揚げ、黄金色になったら、生のショウガと煮詰めた砂糖のシロップにくぐらせ、天日で乾かします。こうすると、さくさくの食感になり、長持ちします。
ホンタイ村のティンミー集落に住む、グエン・ティ・サンさんは、次のように話しています。
(録音)

「材料は、卵と、もち米の粉と、砂糖です。香りづけに、ショウガとバニラを入れます。お正月には、このお菓子が欠かせません。ご先祖様へのお供えには、必ずショウガのお菓子を用意します」
このお菓子には、悲しい伝説があります。
昔、ナイ・チラオ・チョ・フォーという女性が、遠い海へ戦いに出た夫の帰りを、毎日待っていました。彼女は、夫を想ってお菓子をつくり、海に運んで、魚やエビに託しました。「早く帰ってきてください」という願いを込めて。けれども、夫は帰らず、女性は海辺で石になりました。お菓子は、海の底で、色とりどりのサンゴ礁になったと伝えられています。
それ以来、このお菓子は、夫婦の変わらぬ愛の象徴とされ、結婚式でも大切にされています。

ただ、忙しい今の暮らしでは、お菓子をつくる時間がない家庭も増えました。そこで、ティンミー集落のダン・ティ・マイさんは、手先の器用な女性たちに声をかけ、一緒につくり始めました。評判は広がり、今では、省の内外から、チャム族だけでなくほかの民族からも注文が入ります。
マイさんは、チャム語で、次のように話しています。
(録音)
「粉1キロで、お菓子が40個できます。一番の目的は、伝統の仕事を守ることと、仲間の女性たちの収入を、少し増やすことです」
このショウガのお菓子は、ホンタイ村で初めて、「一村一品OCOP」の製品に認定される可能性があります。OCOPは、各村が一つの特産品を育てる、国の制度です。
村の女性連合会も、10人のメンバーで、「女性の起業・伝統のお菓子づくりを守る」という取り組みを始めました。マック・ティ・スアン・トゥイ会長は、次のように話しています。

(録音)
「技術の研修を開いたり、材料を提供したりして、メンバーを支えます。包装やラベルのデザインも手がけます。そうして、一歩ずつ、ティンミー集落の、伝統のお菓子というブランドを築いていきます」
カテ祭りが近づくと、集落の女性たちは、今も集まって、材料をそろえ、お菓子をこねます。できあがったお菓子は、竹串に刺して、色鮮やかな木の柱のまわりに立て、祭壇のそばに供えられます。
平和で、豊かで、幸せな暮らしへの願い。小さなお菓子には、チャム族の思いが、たくさん詰まっています。