(セミの声)
キー村の集会所では、朝早くから村人たちが集まり、準備を進めます。供物を用意する人、儀式の場を整える人、銅鑼の演奏や踊りを練習する人。数日前から、年配者と若者たちが材料をそろえ、共同で小屋を建て、儀式に使う模型を作ってきました。村人のイ・ゾアン・ホドクさんの話です。
(録音)
「村主催のこの儀式に、みなで力を合わせて準備してきました。」
(祈祷師の声)
吉の時刻を迎えると、伝統衣装をまとった村人たちが村の集会所の前庭に集まり、銅鑼の音とともに儀式が始まります。儀式は、雨乞いと村長の健康祈願の二部構成です。祈祷師が伝統儀礼を執り行い、神々に雨と豊作を祈願します。今回健康祈願を受けた村長のイ・バン・ビャさんは、次のように語ります。
(録音)
「健康祈願はエデ族の儀式に欠かせないもので、祈願を受ける人も参列者も、健康と幸運に恵まれるよう願うものです。雨乞いと自分の健康祈願が重なった今日は幸運な日です。来年も伝統儀式を続けられるよう、健康でいたいと思います。」
手作りの動物模型を使用。
儀式のあとには、稲作や狩猟といった生業を再現する催しが行われます。儀式で作り出される雨の光景は、新しい作付けが順調な天候に恵まれるようにとの願いを込めたものです。儀式が終わると祭りの部が始まり、歌や踊り、壺に入れた酒を管で回し飲みする風習、共同の食事で、村の雰囲気はいっそう賑やかになります。村人のヒゼナ・ビャさんは、次のように話します。
(録音)
「踊りと銅鑼の音が溶け合う、盛り上がった一日でした。技術が発展する時代だからこそ、エデ族の伝統は次の世代のために守り伝えていく必要があります。」
(銅鑼の音)
祭りの賑わいの中、国内外の観光客も踊りや銅鑼のリズム、壺酒の香りに溶け込みます。雨乞いの儀式は、村人だけの信仰儀礼にとどまらず、村人と観光客がエデ族の文化的な暮らしを感じ取れる開かれた場となっています。フランスから訪れたアントニーさんは、今回たまたまこの儀式に居合わせました。
(録音)
「とても素晴らしく美しい儀式だと思います。素敵な歌や個性的な踊りをたくさん見ることができました。地元のエデ族の方々はとても素晴らしく、この祭りがとても気に入りました。」
ここ10年近く、雨乞いの儀式は毎年3月末から4月にかけてキー村で復元・開催されてきました。タインニャット地区人民委員会のグエン・ディン・タム委員長によりますと、地区は村人とともに、伝統儀式を維持しながら文化・観光活動とも結びつける長期的な計画を立てているといいます。祭りや儀式を定期的に開催することで、地域文化の継承と地元観光の発展につなげたい考えです。
銅鑼の響きとともに幕を閉じるキー村の雨乞いの儀式は、順調な天候への願いを込めるだけでなく、エデ族の文化的なルーツを思い起こさせるものでもあります。今日の暮らしの中で、キー村に響く銅鑼の音は、雨を呼ぶだけでなく、村の記憶をも呼び起こしています。
