今年の牛レース祭りは9月中旬に開催されました。選び抜かれた力強い牛のペアがレースに挑み、豊作への喜びと願いを乗せて駆け抜けます。
現場の音
最初はゆっくりだった牛の足取りが、突然、スピードを上げます。4頭の牛が一斉に前へ駆け出し、後方には水しぶきと泥が舞い上がります。コースの両側から上がる歓声も、次第に大きくなっていきます。
これは、アンザン省アン・クー村のロー寺で開催された伝統的な牛レースの様子です。レースに出場する力強い牛のペアは、飼い主が事前に選び、丹念に世話をしながらトレーニングを重ねてきました。
牛たちは泥のコースに慣れ、ペアで息を合わせて走ることを覚えなければなりません。牛を操る人も、それぞれの牛の性格を理解し、力を温存するタイミングと、スピードを上げるタイミングを見極める必要があります。
(写真:PhạmHải/VOV)
参加者にとって、勝ち負けももちろん大切ですが、それ以上に、この祭りに参加できることそのものが大きな喜びとなっています。今年、牛のペアを出場させたアンザン省アン・クー村のダオ・バン・カットさんは、次のように話しています。
(テープ)
「楽しむために参加しています。賞を取れればもちろんうれしいです。うちの牛はまだ若くて、大きな牛ではありません。今年も例年どおり大会が開かれ、自分の牛のペアを出場させることができてうれしいです」
現場の音
牛を飼っている人はレースに向けて準備し、牛を飼っていない人は会場に足を運び、なじみのある牛のペアを応援します。牛の飼い主たちは集まって、飼育やトレーニングについて経験を共有します。地域の住民にとっても、これは農作業の日々を離れ、互いに交流する機会となっています。アンザン省ティン・ビエン地区の住民、トゥ・バン・タンさんは、毎年この祭りを楽しみにしていると話します。
(テープ)
「今年は、例年よりも運営がしっかりしていて、秩序が保たれています。主催者がきちんと準備していて、役割分担も明確です。私もとても楽しみにしていました」
バイヌイ山地の牛レースは、クメール族の人々の農耕生活から生まれました。
牛はもともと田畑や農作業に利用されてきました。時代とともに、農作業を終えた後に行われていた牛の競走が、地域の人々に親しまれる文化・スポーツ行事へと発展し、南部クメール族にとって重要な伝統行事の一つとなっています。そのため、レースコースも一般的なスポーツとは大きく異なります。平らな競技場はありません。泥や水、そして水田の滑りやすい地面そのものが、牛とそれを操る人にとって大きな試練となります。
牛を操る人はバランスを保ちながら、2頭の牛を息を合わせて走らせなければなりません。ほんの一瞬、コントロールを失うだけで、レースの流れが変わることもあります。力強さとスピード、そして牛を操る人の周りに泥や水が勢いよく飛び散る光景は、バイヌイ山地の牛レースならではの見どころとなっています。
このレースを見るためだけに、数百キロ離れた場所からアンザン省を訪れる観光客も少なくありません。その中にはカメラを持参し、一瞬一瞬のシャッターチャンスを待つ人もいます。ホーチミン市からレースを見に来たファム・マイン・トゥアンさんは、次のように話しています。
(テープ)
「今年はレースと並行して写真コンテストも開催されるので、多くの写真愛好家が参加を楽しみにしています。それに、これほど大規模に開催されると、牛のペア同士の競争も激しくなり、より美しい瞬間を撮影できると思います」
優勝した牛のペアは、地域の人々から幸運をもたらす存在と考えられ、天候に恵まれ、豊作になることへの願いが託されています。一方、賞を獲得できなかった牛の飼い主にとっても、家族の牛をコースに出場させ、牛レースを愛する人々と交流し、祭りに参加できること自体が喜びとなっています。ロー寺で12回目の開催となった今回も、牛のペアが駆け抜ける姿は、バイヌイ山地のクメール族の人々に長く受け継がれてきた伝統を、今に伝えています。
