豊かな資源を持つベトナムは、地域のサプライチェーン、つまり供給網での役割を、高めようとしています。
アメリカ地質調査所によりますと、ベトナムは、レアアースやボーキサイト、タングステンなど、多くの重要鉱物で、埋蔵量が世界の上位10か国に入ります。タングステンの生産量は、世界で2番目です。
レアアースの埋蔵量について、ベトナム政府は、世界で2番目か3番目と見ています。一方、アメリカ地質調査所の推計は、もう少し慎重で、およそ350万トンです。中でもレアアースは、電気自動車や電子機器に使う、強力な磁石の原料です。日本と韓国の主力産業に、欠かせません。
ベトナムは2010年、日本をレアアース開発のパートナーに選びました。
しかし、北西部ライチャウ省の鉱山開発は、世界の市場が冷え込むなかで止まりました。
それから10年あまり。資源の確保は、経済安全保障の問題となり、重要鉱物は、再び首脳の議題になりました。
トー・ラム書記長・国家主席(左)と
イ・ジェミョン大統領(右)
4月22日、韓国のイ・ジェミョン大統領が、国賓としてベトナムを訪れました。両国は、「重要鉱物サプライチェーンセンター」を、協力の中心に据えることで一致しました。
イ大統領です。
(録音)
「両国は、ベトナムの豊富なレアアース資源と、韓国の技術を組み合わせることで一致しました。今年から整備する、重要鉱物サプライチェーンセンターを、その中心に据えます。」
続いて5月。日本の高市早苗首相が、ベトナムのレ・ミン・フン首相と会談し、経済安全保障を、新たな協力の柱とすることで一致しました。
高市首相です。
(録音)
「重要鉱物については、安定供給の確保とサプライチェーンの強靱化に向けて、緊密に連携していくことで一致しました。」
約束は、少しずつ形になっています。
韓国は、およそ1200万ドルの援助で、技術センターをベトナムに建設します。
日本の信越化学工業は、ベトナム北部ハイフォン市に、レアアース磁石の工場を持っています。韓国企業も、磁石の生産に投資しています。
ベトナムも、制度を整えました。今年初めに施行された法律は、レアアースを、原料のまま輸出することを認めていません。
高市早苗首相(左)
高市首相は、ハノイ国家大学での講演で、次のように述べました。
(録音)
「『産業のコメ』だけではなく、『産業のビタミン』とも言われるレアアースも、ベトナムには豊富に存在し、その戦略的な重要性に注目が集まっています。日本は、サプライチェーン強靱化のために連携を進めていますけれども、中でもASEANは重要なパートナーです。日ベトナムの官民でも、具体的な協力をしていきたいと考えています。」
ただ、目標と現実には、開きがあります。
ベトナム政府は、2030年までに、レアアースの酸化物を、年に2万トンから6万トン加工する目標です。しかし、今の採掘量は、数百トンにとどまります。
国内の事業の多くは、鉱石を選ぶ段階までで、最も価値を生む、分離や精製の段階には届いていません。磁石の工場も、原料は輸入です。
川上と川下はあっても、真ん中の工程が、まだ空いているのです。
タングステンでは、一歩先を行っています。7月、ベトナムの鉱山運営会社が、韓国企業と提携し、韓国で採れた原料を、ベトナムで加工する計画を発表しました。
加工を担えば、ベトナムは、頼られる存在になれます。
レアアースでも、日本と韓国が寄り添えるのは、この工程です。ただし、長期の視点、技術移転、人材育成、そして、環境と放射線の安全基準を守ることが、条件になります。
協力の尺度は、署名した文書の数ではありません。技術を身につけたベトナムの技術者と、動き出す工場です。
資源と、技術や資金が出会うとき、重要鉱物は、ベトナムと日本、韓国をつなぐ、新たな柱となるでしょう。
