ベトナムで温室効果ガスの排出枠とカーボンクレジットを対象とする取引市場が創設されたのは今回が初めてです。この取り組みは、グリーントランスフォーメーションの推進や低炭素経済の発展を後押しするとともに、企業の持続可能な発展目標の達成を支援する新たな市場メカニズムとして期待されています。
カーボン取引市場の運用開始は、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ、いわゆる「ネット・ゼロ」の実現というベトナムの国際公約の履行に向けた重要な節目となります。この市場は、排出枠やカーボンクレジットの登録、保管、取引、決済を一元的に行う基盤となることが期待されています。
近年、カーボンへの対応は、世界市場における製品の競争力を左右する重要な要素の一つとなっています。そのため、国内カーボン取引市場の始動は、ベトナムのカーボン市場の新たな発展段階を示すだけでなく、企業にとっては排出削減への取り組みを競争力や経済的価値へと結び付ける新たな機会にもなります。
専門家は、カーボンが取引可能な資産となることで、企業は排出削減義務を果たすだけでなく、国際基準を満たす排出削減プロジェクトを構築できれば、新たな経済的価値を生み出すことも可能になると指摘しています。また、排出基準への適合は、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカなどが輸入品に対する環境基準を一段と厳格化する中、企業の国際競争力の向上にもつながるとみられています。
ハノイ証券取引所のグエン・アイン・フォン所長は次のように述べました。
(テープ)
「市場の運用開始後も、ハノイ証券取引所は関係機関と連携し、安全で効率的かつ、公正で透明性の高い市場運営に取り組んでいきます。また、広報活動を積極的に進め、排出事業者の市場参加を促すとともに、カーボンクレジットに関心を持つさまざまな組織が、この新たな取引制度を活用できるよう取り組んでいきます。」
気候変動が世界共通の大きな課題となる中、グリーン経済や循環型経済、そして持続可能な成長の実現は、避けて通れない流れとなっています。カーボン取引市場の創設は、温室効果ガス排出枠やカーボンクレジットを公正かつ透明に取引する仕組みを整えるだけでなく、企業が主体的に技術革新を進め、生産効率を高めながら排出削減を進めるための経済的な手段にもなります。
金融市場にとっても、カーボン取引市場はグリーンファイナンス・エコシステムを構成する新たな要素となります。持続可能な開発プロジェクトへの資金調達や資源配分を促進し、資本市場や環境市場の発展において、国際的な慣行に着実に近づいていくことが期待されています。
専門家は、カーボン市場を効果的に機能させるためには、業種ごとの排出量の測定・報告・検証制度を早急に整備するとともに、中小企業に対する温室効果ガス排出量の算定費用への支援や、国内の専門コンサルタントの育成を進める必要があると指摘しています。さらに、グリーンクレジットの提供や、脱炭素への取り組みを先導する企業への優遇措置など、企業のグリーントランスフォーメーションを後押しする制度づくりも重要だとしています。