(VOVWORLD) - ベトナムで今、医療制度の抜本的な改革が動き出しています。
今年の9月、ベトナム共産党政治局が国民の健康向上を目指す決議72号を発表しました。そして今、国会がその実施に向けた具体的な制度づくりを進めています。人への投資を最優先課題として位置づける、強い政治的意志の表れと言えるでしょう。
グローバル化が進む中、国民の健康は国の競争力を左右する重要な要素となっています。
医療再建へ向けた二つの決議
決議72号では、6つの柱が示されています。予防医療の強化、医療人材の育成と医療倫理の徹底、デジタル化の推進、そして民間医療の発展による多様な医療サービスの実現です。国際水準を目指し、あらゆる資源を活用していく方針です。
これは今後の医療政策全体の羅針盤となる、基盤となるビジョンです。
決議72号が大きな方向性を示したのに対し、国会決議はその実現に向けた具体的な設計図となります。現場の課題を洗い出し、実効性のある解決策に焦点を当てています。
ダオ・ホン・ラン保健大臣(写真:VGP) |
ダオ・ホン・ラン保健大臣は次のように述べています。
(テープ)
「中でも注目されるのが、医療費負担の軽減策です。来年2026年からは、対象者に年1回の無料健康診断が実施されます。また、健康保険の範囲内で基本的な入院費が段階的に無料化されます。さらに、多様な保険商品の導入も試験的に始まります。」
重要なのは、この国会決議が単なる方針の具体化にとどまらないことです。医療システム全体を動かし、監督する法的な枠組みを整えるものとなっています。戦略から実行へ、全国一斉に展開されることになります。
国民が求める医療の姿
新しい政策に国民が期待するのは、受診しやすく、費用が安く、質の高い医療です。国会でも議員たちから活発な意見が出されています。質の高いサービスへのアクセス、保険給付の透明化、そして国際水準の専門医育成などです。
ハノイ市選出のグエン・アン・チー国会議員は次のように語りました。
(テープ)
「今回の改革は、医療の質向上への国の本気の約束です。年1回の無料健診は大きな前進でしょう。医療技術の導入やデジタル化、最新の治療法の採用で、ベトナムの医療を先進国レベルに引き上げる。画期的な変革が必要です。何より国民が受診しやすい仕組みを作る。保険があればどこでも受診できる、そんな時代にすべきです。」
議員たちはまた、民間医療の育成も重要だと指摘しています。30年にわたり民間セクターは医療に貢献してきましたが、病床数はわずか7%。サービス提供も全体の14.55%にすぎません。ドイツの25%、フランスの35%、オーストラリアの40%、アメリカや日本の80%以上と比べると、大きく遅れをとっています。
今、ベトナムは歴史的なチャンスを迎えています。数十年ぶりの大規模な医療システム改革です。党政治局と国会のこの二つの決議は、近代的で透明性が高く、国民本位の医療へと扉を開きました。
確実に実行されれば、1億人を超えるベトナム国民が、より良く、より安全で、より公平な医療を受けられる。そんな転換点になる可能性を秘めています。