およそ2ヶ月前のスコットランドのイギリスからの独立の是非を問う住民投票に次ぎ、スペイン北東部カタルーニャ自治州で9日、独立をめぐる非公式な住民投票が実施され、賛成票が80.7%と圧倒的多数を占めました。 これは憲法違反と見られていますが、欧州での分離主義が拡大し、多くの国に試練をもたらすと警鐘を鳴らすものと評されています。
カタルーニャの分離独立を求めるデモ(写真:EPA)
投票には有権者540万人のうち200万人以上が参加しました。これをめぐっては中央政府が憲法裁判所に提訴し、同裁判所は9月末に実施を差し止める判断を下しました。州政府はその後、住民投票ではなく民意を調査するための投 票を行うとしましたが、中央政府はこれについても憲法裁に提訴し、“非公式な”投票についても差し止め命令が出たばかりでした。
長期的政治危機の始まりか
今回の投票について、スペインのカタラ法相は9日夜、声明を発表し「合法性を欠いたもので、独立支持派による政治的な示威行動にすぎない」と批判したうえで、憲法裁判所の差し止め命令を無視する形で投票を強行した州政府側の刑事責任を追及する考えを示しました。
一方、州政府トップのマス州首相は、200万を超す住民が投票に参加したことを尊重すべきだとして、スペイン政府に対して、法的拘束力のある正式な住民投票の実施を迫る構えですが、これを一切認めないスペイン政府との間で緊張が高まっています。
富の原動力
カタルーニャ自治州のバルセロナは、今となってはその面影はあまりませんが、常にスペインの産業革命、技術革新の中心地でした。独立派を最も勢い付けているのはカタルーニャの経済的な影響力です。カタルーニャ自治州の人口は約750万です。
また、4000の多国籍企業があり、GDPは2200億ユーロ(約30兆円)に達しています。スペインのGDPの約5分の1がここで生まれています。その富を目当てに、スペイン各地や世界中から人々がやって来きます。2012年の時点で、カタルーニャの住民の18.6%を外国出身者、18%を国内の他地域の出身者が占めていました。
EU全体への影響
こうした中、アナリストらは、カタルーニャや、スコットランドなどの分離独立は欧州全体に影響を及ぼすと指摘しています。予想される影響として、欧州緒国における分離独立運動の高まりであることなどが挙げられています。
スペインとイギリスのほか、ベルギーは、フランス語圏のワロン地域とオランダ語圏のフラマン地域に割れています。イタリアでも、ドイツ系住民の多いアルト・アディジェ州では古くから分離主義運動があり、近年は北部でも独立派がパダニアと称する地域で自治拡大を主張しています。フランスのコルシカ島でも時折、暴力的な運動が起きています。これらの動きは欧州の発展と安定を阻害するものとなるとしています。