ザライ省に伝わる伝統工芸 バナ族の錦織

(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグエン地方のザライ省に暮らす少数民族バナ族は豊かな伝統文化をもつことで知られています。その中に、彼らに古くから伝わる錦織は、単なる手工芸の域を超え、この地域の少数民族を代表する重要な文化遺産として、今日まで大切に受け継がれています。
ザライ省に伝わる伝統工芸 バナ族の錦織 - ảnh 1

この錦織りの技術を習得するには、並々ならぬ忍耐力と器用さ、そして豊かな創造性が必要です。バナ族の女性たちは昔から、この技術を家庭内で受け継いできました。少女たちは12~13歳になると、母親や祖母に連れられて畑に出かけ、綿花摘みから糸紡ぎ、織物まで、衣服や寝具などの日用品を作る全工程を学びます。実際、錦織の技術は女性の才能を評価する重要な基準とされ、多くの女性が織物や糸紡ぎの技に秀でていました。

ザライ省クバン県トゥトゥン村の熟練職人ディン・プリーさんは次のように語りました。

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「子どもの熱意や興味に応じて、12~13歳から両親と一緒に練習を始めます。まずは頭に巻くひもを作ることから始めて、徐々に模様のデザインを学び、それらを組み合わせて作品を作っていきます」

同じ地域の織物職人ディン・ティ・トップさんによりますと、バナ族の社会では、男性が鍛冶や籠編みを担当する一方、女性は織物や刺繍を専門とし、そのためほぼすべての家庭に織機が置かれています。トップさんの話です

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「私は13歳で基礎を覚え、15、16歳で一人前になって大きな布も織れるようになりました。織物が好きで母に教えを乞いました。専門の先生はいませんでしたが、好きだからこそ続けられたのです」

ザライ省に伝わる伝統工芸 バナ族の錦織 - ảnh 2

美しい錦織を作るには、綿花栽培から始まり、糸紡ぎ、染色、機織りまで、数多くの工程を要します。まず収穫した綿花を乾燥させ、不純物と種を取り除きます。次に綿打ち具で綿を柔らかくし、ヤマアラシの毛を使って約20センチの円筒状に整形します。最後に紡錘車で糸に紡ぎます。先ほどの職人トップさんはさらに次のように説明しました。

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「まず綿を収穫して加工し、それを糸に紡ぎます。次に染色を施し、しっかりと乾燥させてから巻き取り、最後に織機にかけて織り上げていきます。本当に手間のかかる作業なんです」

色彩も重要な要素です。バナ族は森の植物から染料を採取し、それぞれの色に特別な意味を込めます。黒は主要な色として力強さを表現し、クサンやクバイの木から採れる赤は火や血、生命力を象徴します。ウコンやクメックの木による黄色は太陽の光や自然との調和を、チュオンニャイやクパイの木から得られる青は空や植物を表現します。錦織の色について、先ほどの熟練職人ディン・プリーさんは次のように説明しました。

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「この作業は非常に繊細で複雑な工程を必要とします。染色から織り上げるまでには膨大な時間と手間がかかるのです。テイグエン高原の伝統的な色使いは、黒、赤、白、黄色の4色が基本です。これらの色の組み合わせが、私たちテイグエンの人々の特徴的な色彩美を生み出しているのです」

ふだん着は藍染めの黒か黒一色で、装飾的な模様は控えめです。一方、祭りや結婚式の衣装には鮮やかな模様が織り込まれ、ヘッドバンドや斜め掛けバッグ、ベルトなどの装飾品で華やかさを添えます。

現代社会の要請に応じて一部の工程は変化していますが、バナ族は先祖伝来の手作業による工程を大切に守り続けています。それは民族の文化的価値を保存するだけでなく、伝統衣装を身にまとう人々の美しさを一層引き立てる役割も果たしているのです。

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