ベトナムとEU=欧州連合のFTA=自由貿易協定は交渉中ですが、年内に締結が予定されています。同協定が締結されれば、ベトナムに関税の削減や投資誘致の促進、市場の拡大など、様々なチャンスを受ける一方、試練もあります。
ベトナムとEUのFTA、紡績縫製部門などに大きなチャンス
(写真提供:dddn.vn)
ベトナムとEUのFTAはほかの自由貿易協定と違って、広範な分野で協力を掲げている新世代の協定と評されています。交渉分野は関税の削減や貿易促進にとどまらず、投資、環境、競争、持続的な発展にもわたっています。この協定はベトナムの製品にEU市場への進出のため、大きなチャンスを作り出す一方、2025年までにベトナムのGDP=国内総生産を年平均7%~8%、EU向けの輸出額を10%増にするという目標の達成に寄与するとしています。しかしながら、この協定はベトナム企業に少なくない試練をもたらすと予測されています。ベトナム商工会議所・中小企業補助センターのチャン・ティ・タイン・タム副センター長は「各企業は競争力や製品の質的向上に向け、技術を刷新しなければならない」との見解を示し、次のように語りました。
(テープ)
「ベトナムとEUの自由貿易協定が締結されれば、ベトナムの繊維製品や革靴、水産物などに対して、輸出市場が開放されますが、中小企業には圧力がかけられるでしょう。これにより、中小企業は再構築を行い、競争力の向上に尽力しなければなりません。一方で、ベトナムとEUの自由貿易協定に従って、関税が削減されることから、ベトナムはEU諸国からハイテクや原材料をより安い価格で輸入することができます。」
ベトナムとEU自由貿易協定に基づき、タリフラインの90%以上の関税を段階的に撤廃することになります。交渉においてEU側が関心を示しているのは機械・自動機器、鉄鋼、化学品・薬品、食品・アルコール飲料といったベトナムが高関税で保護している分野です。一方、関税の削減につれて、ベトナムの競争力は高まります。しかし、技術や食品安全衛生、動植物の検疫など、非関税障壁が存在することから、ベトナム企業のEU向けの輸出が順調に進められるかどうかは予断できません。デンマークのコペンハーゲン経済大学・アジア研究センターのアリ・コッコ教授はベトナムはEUへの輸出を行えるよう、非関税障壁に対処し、技術的基準を満たすため、態勢を整える必要があると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「関税の引き下げと違って、非関税障壁の撤廃は容易ではありません。非関税障壁は様々あるので、その撤廃は経済体制や法律などの改正を求めます。欧州側はベトナム企業に対し、環境保全や社会的責任、汚職の防止などに関して厳しい要求を出します。これらの要求に応えるため、ベトナムは経済体制を大きく改革しなければなりません。」
欧州貿易政策・投資支援プロジェクトの統計によりますと、2014年、ベトナム農産物の大きな市場向けの輸出が拒否されたことは非関税障壁による試練を見せました。中央経済管理研究院のグエン・ディン・クン院長は「ベトナム企業は非関税障壁への理解がまだ低いことから、国家はFTA締結の前、企業に対し、輸出入や市場に関する知識や情報を提供する必要がある」との意見を述べ、次のように語っています。
「企業に対して、輸出先と同じような基準が設けられる必要があります。また、政府は貿易潤滑化に向け、体制の改革を進め、企業のコストやリスクの軽減が狙いです。この改革は経営環境の改善そのものです。」
ベトナムは経済再構築を進めていますが、EUとの自由貿易協定の締結は経済再構築と多様化に拍車をかけるとしています。それで、ベトナムは国際法へのアプローチに取り組むと同時に国内企業の支援を目指し、柔軟な経済政策を実施する必要があります。そうして、初めて、FTAによる試練をチャンスに、チャンスを利益に変えることが可能になるのでしょう。