(VOVWORLD) - もともと野生植物であったキミノサンザシは、最近、糖尿病、高血圧、睡眠不足、消化不良などに効き目があると知られるようになり、ベトナム北部ソンラ省の山間部の住民にとって経済的価値の高い植物として栽培されるようになっています。
サンザシはバラ科サンザシ属の落葉低木です。果実が黄色に熟するところから日本語でキミノサンザシと呼ばれますが、ベトナム語では「ソンチャ(son tra)」または、「タオメオ(tao meo)」と呼んでいます。
ナムギエップ集落に住むタオ・ア・バンさんが家族のサンザシ園を手入れする(写真:Lê Hạnh/VOV-Tây Bắc) |
もともと野生植物であったキミノサンザシは、最近、糖尿病、高血圧、睡眠不足、消化不良などに効き目があると知られるようになり、ベトナム北部ソンラ省の山間部の住民にとって経済的価値の高い植物として栽培されるようになっています。
ソンチャの木は、ソンラ省ゴックチェン村ナムギエップ集落に住む少数民族モン族の人々の生活に古くから深く関わってきました。この地はベトナムで最大のソンチャの森があり、地元行政府と村民はこの優位性を生かし、ソンチャを生活を支える作物から特別な観光商品へと発展させています。
色とりどりの花が咲く森に囲まれた穏やかな村の風景(写真:Lê Hạnh/VOV-Tây Bắc) |
標高2000~2500mに位置するナムギアップ集落は、ベトナムで最も高い場所にあり、約1260ヘクタールのソンチャ栽培面積に及んでいます。ソンチャの花は咲く2月下旬から3月にかけて、何千ヘクタールもの白い花が山々を覆い、雄大で幻想的な風景が広がり、多くの観光客を魅了します。2024年にソンラ省がソンチャ祭りを初めて開催して以来、これまでに2回開催されたこのイベントは、ゴックチェン村の山間部に大勢の観光客を呼び込むことに貢献し、年間推定5万~20万人の観光客が訪れています。
ナムギエップ集落にやってくる観光客は、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのような気分を味わうことができます。
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「初めてソンチャの花が咲く季節にこの村に来ることができて、とても嬉しいです。ここは白い花と、色鮮やかな民族衣装を着た人々が参加するお祭りであふれていました。ゴックチェン村とソンチャの花の季節を広く知ってもらい、地元観光をさらに促進するためには、このようなお祭りを定期的に開催する必要があると思います」
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「車で向かう途中、最初のソンチャの木を見たときから、すでにとても美しいと感じました。奥に進むにつれて、ソンチャの木が増えていき、村全体が白い花で覆われていました。本当に美しいです」
サンザシは生計手段から、ゴックチェン村の「おとぎの国」にしかない独特な観光資源となる(写真:Lê Hạnh/VOV-Tây Bắc) |
地元のモン族の人々によりますと、ソンチャの木はこの地に古くから存在しており、樹齢300年から500年の古木が約800ヘクタールにわたって自生しているということです。その後、住民たちは森を守ると同時に、実を収穫して経済を発展させ、収入を増やす目的でソンチャの栽培を拡大しました。
ナムギエップ集落に住むタオ・ア・バンさんは、次のように語っています。
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「以前は、ソンチャの実は売れば収入になりました。その後、この古木のソンチャの花がとても美しいことに多くの人が感銘を受け、ハノイから多くの人が『ソンチャの花が美しいと聞いてここに来た』と言ってくれました。それ以来、私は『なぜ観光事業をしないのか』と考えるようになりました」
かつては、飢餓一層・貧困解消の作物であったソンチャは、現在、観光事業と結びつくことで、住民に新たな収入源をもたらしています。それぞれの家庭は、ソンチャの花が咲く季節の体験観光サービスを通じて、新たな収入源も得られるようになってきました。ソンチャの花が咲き誇るこの地を訪れる観光客は、自然の美しさを満喫するだけでなく、山岳地帯に住む人々の暮らしや文化を体験し、地元の名物料理を楽しむこともできるからです。
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「住民の皆さんは、ソンチャの花がとても貴重な花であることを知っています。第一に、花が観光客を惹きつけるのに役立ち、第二に、ソンチャの実を売って収入を得るからです」
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「徐々に観光客が増えています。村の人々も徐々に観光開発を進めています」
古木のサンザシが真っ白な花を咲かせる様子を眺めるだけでなく、観光客は高地に暮らすモン族の文化も体験できる(写真:Lê Hạnh/VOV-Tây Bắc) |
ゴックチェン村の2025年~2030年期の第1回共産党大会に提出された政治報告によりますと、同村は年間観光客数1万8000人、観光活動による総収益約108億ドン、約61万円の達成を目指しています。ゴックチェン村党委員会のグエン・ミン・トゥアン委員長は、この目標を達成するためには、住民が民族文化の保存に協力するよう引き続き奨励し、ゴックチェンの観光をより持続可能な形で発展させていくと明らかにしました。
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「村の党委員会は、地元の強みである観光と農業の発展に重点を置くことで一致しました。これを実現するには、住民の決意、協力、そして政治システム全体の参加が不可欠です。私たちは、この目標を達成できると信じています」
行政当局の支援を受け、地元住民もまた、故郷の発展に貢献する意識を徐々に高めています。ナムギエップ集落に住むカン・ア・フィンさんは、次のように語っています。
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「私たちは、ソンチャの木の植林を増やし、栽培面積を拡大し続けます。まず第一に、森を守るためです。第二に、土壌の浸食や洪水から土地を守るためです。同時に、観光客を呼び込み、涼しい気候を保ち、ソンチャの木がある村としてより多くの観光客に知ってもらえるように景観を整えます」
かつてはモン族の人々の持続可能な生計手段であったソンチャの木は、ゴックチェン村において独自の観光商品となり、「ソンチャのおとぎの国」としてのブランドをベトナムの観光地図上に確立するのに貢献しています。地方行政府と住民の協力、そして豊かな自然と地元の文化のおかげで、ゴックチェンは魅力的な観光地としての地位を確立しつつあり、観光客に忘れられない体験を提供し、この地に発展の未来を切り開くことが期待されています。