ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、アメリカが提示したロシアとの和平案の受け入れを巡って、ウクライナが尊厳や自由、あるいはアメリカの支持を失うリスクがあるとして「厳しい選択を迫られている」との認識を示しました。

アメリカのトランプ大統領は、ウクライナが和平案を受け入れる期限について、来週27日が適切だと表明しています。複数の関係筋によりますと、アメリカはウクライナに合意を促すため、情報共有や武器供給を削減する方針も示しているということです。

トランプ大統領はまた、マムダニ次期ニューヨーク市長との会談の冒頭で記者団に対し、ロシアの軍事行動を阻止するため「ゼレンスキー大統領はアメリカが提案する和平案を承認する必要がある」と述べ、受け入れに向けて圧力を強めました。さらに、紛争はより早く解決すると想定していたとの見方も改めて示しました。

アメリカが提示した28項目の和平案には、ウクライナの領土割譲や軍縮のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟の禁止など、ロシア側の主要な要求の一部が盛り込まれています。一方で、ロシアが制圧した地域からの軍撤退など、ロシア側が反対する可能性のある内容も含まれています。

ロシアのプーチン大統領は、アメリカの和平案を受け取ったことを明らかにし、ウクライナとの紛争の平和的解決の基盤となり得るとの認識を示しました。また「アメリカ政権はこれまでウクライナ側の同意を得られていない。ウクライナは反対している」と述べました。

ゼレンスキー大統領は国民向けの演説で、和平案を巡りアメリカと協力して取り組む姿勢を示しつつ、「ウクライナの利益を裏切ることはない」と強調しました。向こう1週間で政治圧力が強まると予想される中、ロシアが和平プロセスの妨害を試みる恐れがあるとして、国民に結束を呼びかけました。その上で「尊厳を失うか、主要なパートナーを失うリスクを負うか、極めて困難な選択を迫られている」とし、「ウクライナは今、歴史の中で最も困難な時期に直面している」と述べ、「ウクライナ国民の尊厳と自由が見過ごされることのないよう、24時間体制で戦う」と言明しました。

フランス大統領府によりますと、アメリカがウクライナに和平案を提示したことを受け、仏英独の首脳は21日、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、和平案はウクライナが完全に関与し、主権を守り、将来的な安全を保証するものでなくてはならないとの認識で一致しました。

複数の関係筋によりますと、ウクライナと仏英独の4カ国は、アメリカの28項目の和平案に対抗する独自の和平案を取りまとめる作業を進めていて、他の欧州諸国もこの動きに加わる可能性が高いということです。

また、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は21日、EU首脳が23日に20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる南アフリカのヨハネスブルクで、ウクライナ情勢を協議する会合を開くと発表しました。「ゼレンスキー大統領と協議し、現状について意見交換した。ウクライナ抜きのウクライナに関する決定はあり得ないという立場を明確にした」と述べています。

ゼレンスキー大統領は21日、アメリカのバンス副大統領とも約1時間の電話会談を行い、会談後に「アメリカと欧州と協力し、国家安全保障担当の補佐官レベルで和平への道筋を現実的なものにしていくことで合意した」とXに投稿しました。「トランプ大統領の流血を終わらせる意欲をウクライナは常に尊重しており、あらゆる現実的な提案を前向きに受け止めている」とも述べています。

さらに、ドイツのメルツ首相はXへの投稿で、トランプ大統領と電話会談し、和平案を巡る協議を行ったと明らかにし、「良好な会談だった」と述べました。報道官によりますと、メルツ氏は今後の対応を調整するため、他の欧州諸国にも連絡する見通しだということです。

和平案が協議される中でも、ロシア軍はウクライナ東部での進軍を続けています。ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は20日、プーチン大統領に対し、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを制圧したと報告しました。国内ではゼレンスキー大統領の側近を巻き込む大規模な汚職疑惑の捜査も進んでいて、ウクライナは極めて困難な状況に直面しています。(ロイター)